万葉集 巻第十五 3612〜3614番
青丹よし 奈良の都に
備後国の長井の浦に泊まった夜の歌三首。奈良の都に行く人がいたら旅の船の泊まりを告げてもらうのにという大判官の旋頭歌、多くの島を隠れ来たが奈良の都は忘れられないという歌、帰りに妻に見せようと沖の白玉を拾って行こうという歌。
場面イラスト(準備中)
題詞備後國水調郡長井浦に舶泊てし夜作れる歌三首
- 1青青あお丹丹によしよしよし安乎爾與之3612 大判官
- 2奈良奈良ならののの都都みやこににに奈良能美也故爾
- 3行行ゆくくく人人ひともももがががももも由久比等毛我母
- 4草草くさ枕枕まくら久佐麻久良
- 5旅旅たび行行ゆくくく船船ふねののの多妣由久布禰能
- 6泊泊とまり告告つげげげむむんににに登麻利都礙武仁
- 7海海うな原原はらををを海原乎3613
- 8八十八十やそ島島しま隱隱がくりりり夜蘇之麻我久里
- 9來來きぬれぬれぬれどもどもども伎奴禮杼母
- 10奈良奈良ならののの都都みやこははは奈良能美也故波
- 11忘忘わすれれれかねかねかねつつつももも和須禮可禰都母
- 12歸歸かえるるるさささににに可敝流散爾3614
- 13妹妹いもににに見見みせせせむむんににに伊母爾見勢武爾
- 14わたつみわたつみわたつみののの和多都美乃
- 15沖沖おきつつつ白白しら玉玉たま於伎都白玉
- 16拾拾ひりひひいててて行行ゆかかかななな比利比弖由賀奈
現代語訳
〔3612〕(青丹よし)奈良の都に行く人がいたらなあ。(草枕)旅を行く船の泊まり場所を、家に告げてもらおうに。
〔3613〕海原を行き、多くの島々を隠れながらやって来たけれど、奈良の都は忘れられないことだ。
〔3614〕帰る時にいとしい人に見せようと思って、海の沖の白玉を拾って行こう。
意訳
備後の長井の浦に泊まった夜の歌である。大判官(壬生宇太麻呂)は、都へ行く人がいたら今夜の泊まりを家族に知らせたいと旋頭歌で詠み、続いて、島々を巡って来ても奈良の都は忘れられない歌、帰りに妻へのみやげとして白玉を拾って行こうという歌が続く。
語釈・文法注
文法・本文
- 泊
- 「とまり」。船の泊まる所。
- 八十島隱り
- 多くの島々の陰を通って。
- 歸るさ
- 帰る時。
- 白玉
- 真珠。
和歌
- 作者
- 作者未詳
- 出典
- 『万葉集』巻第十五・部立なし・3612〜3614番
- 歌体
- 短歌(五七五七七)
- 時期
- 作者未詳(時代を問わない)
- 状況
- 遣新羅使人が備後国水調郡(今の広島県三原市あたり)の長井の浦に泊まった夜の歌。3612番は大判官壬生宇太麻呂の旋頭歌。
修辞
- 旋頭歌
- 3612番は五七七五七七の旋頭歌。
解説
長井の浦は今の広島県三原市糸崎のあたりとされる。
関連
出典
- 底本
- 佐佐木信綱編『新訓万葉集』下巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、556頁(コマ71)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 原文
- 佐佐木信綱編『白文万葉集』下巻 岩波書店、昭和5年(1930)、650頁(コマ89)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日