万葉集 巻第十五 3586〜3587番
我が故に 思ひな瘦せそ
遣新羅使人と妻との贈答歌の続き。秋風の吹く月には逢えるのだから私のために思いやつれるなという夫の歌と、新羅へ行くあなたに逢える日を今日か明日かと身を慎んで待とうという妻の歌。
場面イラスト(準備中)
題詞新羅に遣さるる使人等、別を悲しみて贈答し、及海路に情を慟しみ思を陳ぶ、并に所に當りて誦詠せる古歌
現代語訳
〔3586〕私のために思い悩んでやせないでおくれ。秋風の吹くその月には、逢えるのだから。
〔3587〕(栲衾)新羅へいらっしゃるあなたに逢える日を、今日か明日かと、身を慎んで待っていましょう。
意訳
遣新羅使人と妻の贈答の続きである。夫は秋には帰って逢えるのだから思い悩んでやせるなと慰め、妻はあなたに逢える日を今日か明日かと身を慎んで待っていようと答える。
語釈・文法注
文法・本文
- 思ひな瘦せそ
- 思い悩んでやせるな。
- 逢はむものゆゑ
- 逢えるのだから。
- 栲衾
- 「たくぶすま」。「新羅」にかかる枕詞。白い栲の夜具から「しら」を導く。
- 君が目
- あなたに逢うこと。
- 齋ひて
- 「いはひて」。身を慎んで。
和歌
- 作者
- 作者未詳
- 出典
- 『万葉集』巻第十五・部立なし・3586〜3587番
- 歌体
- 短歌(五七五七七)
- 時期
- 作者未詳(時代を問わない)
- 状況
- 遣新羅使人とその妻の贈答。
修辞
- 枕詞
- 「栲衾」。
解説
使節は秋に帰る予定だったが、実際には大使阿倍継麻呂が対馬で病死するなど苦難の旅となり、帰京は翌年になった。
関連
出典
- 底本
- 佐佐木信綱編『新訓万葉集』下巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、553頁(コマ69)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 原文
- 佐佐木信綱編『白文万葉集』下巻 岩波書店、昭和5年(1930)、645頁(コマ86)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日