古典ライブラリー

万葉集 巻第十四 3497〜3499番

河上の 根白高草

作者未詳

国名未詳の東歌の相聞。川上の根白高草のようにむやみに共寝をしたからこそ噂に出たのだという歌、海原の柔らかい小菅のように女はたくさんいるのであなたは私を忘れるが、私は忘れようかという歌、岡に寄せて刈る狭萎草のように本当に柔らかに寝ろとは言わないのかという歌。

川上の岸辺に、根の白い高草が茂っている

題詞東歌(相聞)

  1. 1河かは河かはかわ上かみ上かみかみののの可波加美能3497
  2. 2根ね根ねね白じろ白じろじろ高たか高たかたか草がや草がやがや禰自路多可我夜
  3. 3あやあやあやにににあやあやあやににに安也爾阿夜爾
  4. 4さささ宿ね宿ねねさささ寐ね寐ねねてててこそこそこそ左宿左寐氏許曾
  5. 5言こと言ことことににに出で出ででにににしかしかしか己登爾氏爾思可
  6. 6海うな海うなうな原はら原はらはらののの宇奈波良乃3498
  7. 7ねやはらねやはらねやわら小こ小ここ菅すげ菅すげすげ根夜波良古須氣
  8. 8あまたあまたあまたあれあれあればばば安麻多阿禮婆
  9. 9君きみ君きみきみははは忘わす忘わすわすらららすすす伎美波和須良酒
  10. 10吾わ吾わわ忘わす忘わすわするれるれるれややや和禮和須流禮夜
  11. 11岡をか岡をかおかににに寄よ寄よよせせせ乎可爾與世3499
  12. 12我わ我わわががが刈か刈かかるるる草かや草かやかやののの和我可流加夜能
  13. 13狹さ狹ささ萎ね萎ねね草がや草がやがやののの左禰加夜能
  14. 14まことまことまこと柔なごや柔なごやなごやははは麻許等奈其夜波
  15. 15寢ね寢ねねろろろとととへへへなかもなかもなかも禰呂等敝奈香母

引用の仕方

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現代語訳

〔3497〕川上の根の白い高草のように、むやみに共寝をしたからこそ、噂に出てしまったのだ。

〔3498〕海原の柔らかな小菅のように、女はたくさんいるので、あなたは私をお忘れになる。私は忘れようか。

〔3499〕岡に寄せて私が刈る草の、狭萎草のように、本当に柔らかに寝ようとは言わないのか。

意訳

国名の分からない東歌の相聞の続きである。共寝を重ねたために噂が立ったという歌、相手には多くの女がいて自分を忘れても自分は忘れないという歌、刈った柔らかな草のように共寝をしようと誘う歌である。

語釈・文法注

文法・本文

根白高草
「ねじろたかがや」。根の白い丈の高い草。「あやに」を導く序か。
あやにあやに
むやみに。
言に出にしか
噂に出てしまったのか。
ねやはら小菅
柔らかな小菅。
忘らす
お忘れになる。
吾忘るれや
私が忘れようか。
狹萎草
「さねがや」。柔らかな草。「さ寝」を掛ける。
柔
「なごや」。柔らかに。
寢ろとへなかも
寝ようと言わないのか。東国方言。

和歌

作者
作者未詳
出典
『万葉集』巻第十四・相聞・3497〜3499番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
作者未詳(時代を問わない)
状況
東歌の相聞。作者未詳。国名未詳。

修辞

序詞
3497番の「河上の根白高草」、3498番の「海原のねやはら小菅」、3499番の「岡に寄せ我が刈る草の狹萎草の」。
掛詞
3499番の「狹萎草」に「さ寝」を掛ける。

解説

3499番は草刈りの作業の中で歌われた、労働歌の趣がある。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』下巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、542頁(コマ64)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』下巻 岩波書店、昭和5年(1930)、630頁(コマ79)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日