万葉集 巻第十四 3353〜3354番
あらたまの 城柵の林に
遠江国の相聞歌二首。城柵の林で噂を立てられて行けそうにない、共寝を先にしようという歌と、城柵の人の斑衾に綿がたっぷり入ればよいのに、妹の床に、という歌。
場面イラスト(準備中)
題詞東歌(相聞)遠江國
現代語訳
〔3353〕(あらたまの)城柵の林で噂を立てられて、とても行けそうにない。まず共寝を先にしてしまおう。
〔3354〕城柵の人の斑の衾に、綿がたっぷり入っているように、私も入ってしまえばよかったのに。いとしい人の床に。
意訳
遠江国の相聞歌である。3353番は、城柵の林のあたりで二人の仲が噂になって通えそうもないので、ともかく共寝を先にしようと詠む。3354番は、城柵の人の斑の衾に綿がたっぷり入っているのを見て、自分も恋人の床に入りこめたらと願う歌である。
語釈・文法注
文法・本文
- あらたまの
- 「城柵(きべ)」にかかる枕詞。遠江国の麁玉郡の地名とも。
- 城柵
- 「きべ」。遠江国の地名。白文は「伎倍」と書く。
- 行きかつましじ
- とても行けないだろう。
- 寐
- 「い」。眠り、共寝。
- 斑衾
- 「まだらぶすま」。まだら模様の夜具。
- 多
- 「さはだ」。たくさん。
- 小床
- 「をどこ」。寝床。
和歌
- 作者
- 作者未詳
- 出典
- 『万葉集』巻第十四・相聞・3353〜3354番
- 歌体
- 短歌(五七五七七)
- 時期
- 作者未詳(時代を問わない)
- 状況
- 東歌の相聞。作者未詳。遠江国の歌。
修辞
- 譬喩
- 3354番は衾に入る綿に、恋人の床に入りたい思いを重ねる。
解説
城柵(伎倍)は今の静岡県浜松市あたりの地名とされる。
関連
出典
- 底本
- 佐佐木信綱編『新訓万葉集』下巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、529頁(コマ57)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 原文
- 佐佐木信綱編『白文万葉集』下巻 岩波書店、昭和5年(1930)、612頁(コマ70)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日