万葉集 巻第十二 3217〜3218番
荒津の海 吾幣奉り
荒津の海に幣を捧げて身を慎もう、早く帰ってください、面変わりせずに、と女が言う。毎朝筑紫の方を出て見ながら声をあげて泣いている、どうしようもなくて、と男が答える。問答の歌。
場面イラスト(準備中)
題詞(問答)
現代語訳
〔3217〕荒津の海に私は幣を捧げて、身を慎んでいよう。早く帰っていらしてください。面変わりもせずに。
〔3218〕毎朝、筑紫の方を出て見ながら、声をあげて泣いてばかりいる。ひどくどうしようもなくて。
意訳
問答の歌である。海に幣を捧げて身を慎んで待つから、やつれずに早く帰ってほしいという女に、男は都への帰途、毎朝筑紫の方を振り返っては声をあげて泣いていると答える。
語釈・文法注
文法・本文
- 齋ひてむ
- 「いはひてむ」。身を慎んでいよう。
- 面變り
- 「おもがはり」。顔つきが変わること、やつれること。
- 哭のみぞ泣く
- 声をあげて泣いてばかりいる。
和歌
- 作者
- 作者未詳
- 出典
- 『万葉集』巻第十二・相聞・3217〜3218番
- 歌体
- 短歌(五七五七七)
- 時期
- 作者未詳(時代を問わない)
- 状況
- 問答。作者未詳。
修辞
- 問答
- 別れた後の互いの思い。
解説
3217番の「面變りせず」は、旅のやつれを案じる妻の言葉として、離別の歌によく見られる。
関連
出典
- 底本
- 佐佐木信綱編『新訓万葉集』下巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、493頁(コマ39)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 原文
- 佐佐木信綱編『白文万葉集』下巻 岩波書店、昭和5年(1930)、570頁(コマ49)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日