古典ライブラリー

万葉集 巻第十二 3194〜3196番

氣の緒に 吾が思ふ君は

作者未詳

命をかけて思う君は、東国の坂を今日越えているだろうか。磐城山を真っすぐ越えて来てください、許奴美の浜で私は立って待とう。春日野の浅茅原に後に残されて、いつと定めもない、私の恋しく思う心は。悲別歌三首。

許奴美の浜で、女が立って夫の帰りを待っている

題詞(別を悲しめる歌)

  1. 1氣いき氣いきいきののの緒を緒ををににに氣緒爾3194
  2. 2吾わ吾わわががが思も思ももふふう君きみ君きみきみははは吾念君者
  3. 3鷄とり鷄とりとりががが鳴な鳴ななくくく鷄鳴
  4. 4東方あづま東方あづまあずまののの坂さか坂さかさかををを東方坂乎
  5. 5今日けふ今日けふきょうかかか越こ越ここゆゆゆらむらむらん今日可越覽
  6. 6磐城いはき磐城いはきいわき山やま山やまやま磐城山3195
  7. 7直ただ直ただただ越こ越ここえええ來き來ききままませせせ直越來益
  8. 8磯いそ磯いそいそ埼さき埼さきさきののの礒崎
  9. 9許奴美こぬみ許奴美こぬみこぬみののの濱はま濱はまはまににに許奴美乃濱爾
  10. 10吾われ吾われわれ立た立たたちちち待ま待ままたたたむむん吾立將待
  11. 11春日かすが春日かすがかすが野ぬ野ぬぬののの春日野之3196
  12. 12淺あさ淺あさあさ茅ぢ茅ぢじががが原はら原はらはらににに淺茅之原爾
  13. 13おくれおくれおくれ居ゐ居ゐいててて後居而
  14. 14時とき時ときときぞぞぞともともともなしなしなし時其友無
  15. 15吾わ吾わわががが戀こ戀ここふふうらくらくらくははは吾戀良苦者

引用の仕方

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現代語訳

〔3194〕命をかけて私が思うあなたは、(鷄が鳴く)東国の坂を、今日越えているのだろうか。

〔3195〕磐城山をまっすぐ越えておいでください。磯崎の許奴美の浜で、私は立って待っていよう。

〔3196〕春日野の浅茅原に後に残されていて、いつと定めもない。私の恋しく思う心は。

意訳

悲別歌の続きである。東国へ旅立った夫が今日あたり坂を越えているだろうかと思う歌、山を越えてまっすぐ帰って来てほしい、浜で立って待っているという妻の歌、春日野に残されて絶え間なく恋しく思う歌が並ぶ。

語釈・文法注

文法・本文

氣の緒に
命をかけて。
鷄が鳴く
「東」にかかる枕詞。
東方の坂
「あづまのさか」。東国への坂。足柄・碓氷の坂とも。
磐城山
「いはきやま」。駿河の地名かという。
許奴美の濱
「こぬみのはま」。所在未詳。

和歌

作者
作者未詳
出典
『万葉集』巻第十二・相聞・3194〜3196番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
作者未詳(時代を問わない)
状況
悲別歌。作者未詳。

修辞

枕詞
3194番の「鷄が鳴く」。

解説

3195番は、山をまっすぐ越えて早く帰って来てほしいと、浜辺に立って待つ妻の切ない願いを詠んでいる。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』下巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、491頁(コマ38)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』下巻 岩波書店、昭和5年(1930)、567頁(コマ47)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日