万葉集 巻第十二 3131〜3134番
月易へて 君をば見むと
月を替えてからあなたに逢おうと思うからか、日も替わらないのに恋しさがつのる。行くなと引き返して来るかと振り返りながら行くが、長い道は少しも進まない。旅で妹を思い出し、人に知られるほど嘆くだろうか。里を離れて遠くもないのに、旅だと思うとやはり恋しい。羈旅発思の歌四首。
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題詞(羈旅に思を發す)
- 1月月つき易易かへへへててて月易而3131
- 2君君きみをををばばば見見みむむむととと君乎婆見登
- 3念念おもへへえかもかもかも念鴨
- 4日日ひももも易易かへへへずずずしししててて日毛不易爲而
- 5戀戀こいののの繁繁しげけけけむむん戀之重
- 6ななな去去ゆきききそそそととと莫去跡3132
- 7還還かえりりりももも來來くやややととと變毛來哉常
- 8顧顧かえりみににに顧爾
- 9行行ゆけけけどもどもども滿滿みたたたずずず雖往不滿
- 10道道みちののの長長なが道道てををを道之長手矣
- 11旅旅たびにににしししててて去家而3133
- 12妹妹いもををを思思おもひひい出出いで妹乎念出
- 13いちじろくいちじろくいちじろく灼然
- 14人人ひとののの知知しるるるべくべくべく人之應知
- 15歎歎なげきせせせむむんかもかもかも歎將爲鴨
- 16里里さと離離さかりりり里離3134
- 17遠遠とおからからからなくなくなくににに遠有莫國
- 18草草くさ枕枕まくら草枕
- 19旅旅たびとととししし思思おもへへえばばば旅登之思者
- 20なほなほなお戀戀こひひいにににけりけりけり尙戀來
現代語訳
〔3131〕月が替わってからあなたに逢おうと思っているからか、日も替わらないうちから、恋しさがつのることだ。
〔3132〕行かないでと引き返して来るかと振り返り振り返り行くので、いくら行っても進まない。長い道のりを。
〔3133〕旅にあっていとしい人を思い出し、はっきりと人に知られるほどに、嘆くのだろうか。
〔3134〕里を離れてまだ遠くもないのに、(草枕)旅だと思うと、やはり恋しくなったことだ。
意訳
羈旅発思の歌の続きである。月が替わってから逢おうと思うと日も経たないうちに恋しくなる歌、引き止められるかと振り返りながら行くので道が進まない歌、旅先で妻を思って人目に立つほど嘆くだろうという歌、里から遠くないのに旅だと思うと恋しい歌が並ぶ。
語釈・文法注
文法・本文
- 月易へて
- 月が替わって。
- な去きそ
- 行かないで。
- 滿たず
- 進まない。
- 長道
- 「ながて」。長い道のり。
- いちじろく
- はっきりと。
和歌
- 作者
- 作者未詳
- 出典
- 『万葉集』巻第十二・相聞・3131〜3134番
- 歌体
- 短歌(五七五七七)
- 時期
- 作者未詳(時代を問わない)
- 状況
- 羈旅発思。作者未詳。
修辞
- 枕詞
- 3134番の「草枕」が「旅」にかかる。
解説
3132番は、旅立つ男が恋人に引き止められるのを期待して振り返るので道がはかどらないという、別れの名残を詠んでいる。
関連
出典
- 底本
- 佐佐木信綱編『新訓万葉集』下巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、487頁(コマ36)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 原文
- 佐佐木信綱編『白文万葉集』下巻 岩波書店、昭和5年(1930)、562頁(コマ45)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日