古典ライブラリー

万葉集 巻第十二 3125〜3126番

ひさかたの 雨のふる日を

作者未詳

雨の降る日に、わが家の門に蓑笠も着ないで来た人は誰か、と女が問う。纏向の痛足の山に雲がかかって雨は降っていたが、濡れながら来たのだ、と男が答える。問答の歌の終わり。

纏向の痛足の山に雨雲がかかり、男が濡れながら歩いて来る

題詞(問答)

  1. 1ひさかたひさかたひさかたののの久堅乃3125 問
  2. 2雨あめ雨あめあめのののふるふるふる日ひ日ひひををを雨零日乎
  3. 3我わ我わわががが門かど門かどかどににに我門爾
  4. 4蓑みの蓑みのみの笠かさ笠かさかさ著き著ききずずずててて蓑笠不蒙而
  5. 5來きた來きたきたるるる人ひと人ひとひとややや誰たれ誰たれたれ來有人哉誰
  6. 6纏向まきむく纏向まきむくまきむくののの纏向之3126 答
  7. 7痛足あなし痛足あなしあなしののの山やま山やまやまににに痛足乃山爾
  8. 8雲くも雲くもくも居ゐ居ゐいつつつつつつ雲居乍
  9. 9雨あめ雨あめあめははは零ふ零ふふれれれどもどもども雨者雖零
  10. 10ぬれぬれぬれつつつつつつぞぞぞ來こ來ここししし所沾乍烏來

引用の仕方

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現代語訳

〔3125〕(ひさかたの)雨の降る日に、わが家の門に、蓑も笠もつけずにやって来た人は、誰なのか。

〔3126〕纏向の痛足の山に雲がかかって、雨は降っていたけれど、濡れながらやって来たのだ。

意訳

問答の歌の結びである。雨の日に蓑笠もつけずに来たのは誰かと、うれしさを隠して問う女に、男は、痛足の山に雨雲がかかっていたが濡れながら来たのだと答える。

語釈・文法注

文法・本文

ひさかたの
「雨」にかかる枕詞。
纏向
「まきむく」。大和の三輪山麓の地名。
痛足の山
「あなしのやま」。纏向の穴師山。
雲居つつ
雲がかかっていて。

和歌

作者
作者未詳
出典
『万葉集』巻第十二・相聞・3125〜3126番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
作者未詳(時代を問わない)
状況
問答。作者未詳。

修辞

問答
「誰」と問われ、自分の来た道のりで答える。

解説

3126番は、人麻呂歌集の「巻向の痛足の川ゆ往く水の」(1100番)などと同じく、纏向・痛足の地名を詠み込んだ歌である。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』下巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、486頁(コマ36)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』下巻 岩波書店、昭和5年(1930)、561頁(コマ44)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日