古典ライブラリー

万葉集 巻第十二 3123〜3124番

ただ獨 宿れど寢かねて

作者未詳

独りで寝ても眠れなくて、白妙の袖を笠にして濡れながら来た、と男が言う。雨も降り夜も更けた、今さら帰りはしないでしょう、紐を解いて待ちましょう、と女が答える。問答の歌。

雨の夜、袖を笠にして濡れながら男が恋人の家を訪ねてくる

題詞(問答)

  1. 1ただただただ獨ひとり獨ひとりひとり直獨3123 問
  2. 2宿ぬ宿ぬぬれれれどどど寢ね寢ねねかねかねかねててて宿杼宿不得而
  3. 3白しろ白しろしろ妙たへ妙たへたえののの白細
  4. 4袖そで袖そでそでををを笠かさ笠かさかさににに著き著きき袖乎笠爾著
  5. 5ぬれぬれぬれつつつつつつぞぞぞ來こ來ここししし沾乍曾來
  6. 6雨あめ雨あめあめももも零ふ零ふふりりり雨毛零3124 答
  7. 7夜よ夜よよもももふけふけふけにににけりけりけり夜毛更深利
  8. 8今いま今いまいま更さら更さらさらににに今更
  9. 9君きみ君きみきみ行い行いいなななめめめやややももも君將行哉
  10. 10紐ひも紐ひもひも解と解ととききき設ま設ままけけけななな紐解設名

引用の仕方

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現代語訳

〔3123〕ただ独りで寝たけれど眠れなくて、白妙の袖を笠にかぶって、濡れながらやって来たことだ。

〔3124〕雨も降り、夜も更けてしまった。今さらあなたは帰って行かれましょうか。紐を解いて待っていましょう。

意訳

問答の歌である。独り寝ができずに雨の中を袖を笠にして濡れながら来た男に、女は、雨も降り夜も更けたのだから帰りはしないでしょうと、紐を解いて迎えようと答える。

語釈・文法注

文法・本文

寢かねて
眠ることができなくて。
行なめやも
「いなめやも」。帰って行くだろうか、いや行かない。
設けな
「まけな」。用意しよう。

和歌

作者
作者未詳
出典
『万葉集』巻第十二・相聞・3123〜3124番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
作者未詳(時代を問わない)
状況
問答。作者未詳。

修辞

問答
雨と夜更けを口実に、男を引き留める女の答え。

解説

3124番は、雨と夜更けを理由に、恋人に泊まっていくよう誘う、情の深い答えの歌である。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』下巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、486頁(コマ36)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』下巻 岩波書店、昭和5年(1930)、561頁(コマ44)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日