古典ライブラリー

万葉集 巻第十二 3099〜3100番

紫草を 草と別く別く

作者未詳

紫草を他の草と区別して伏す鹿のように、寝る野は別でも心は同じ。思ってもいないのに思っていると言ったら、卯名手の社の神がお見通しになるだろう。草・社に寄せた歌二首。寄物陳思の歌の終わり。

紫草の生える野に、鹿が身を伏せている

題詞(物に寄せて思を陳ぶ)

  1. 1紫草むらさき紫草むらさきむらさきををを紫草乎3099
  2. 2草くさ草くさくさととと別わ別わわくくく別わ別わわくくく草跡別別
  3. 3伏ふ伏ふふすすす鹿しし鹿ししししののの伏鹿之
  4. 4野ぬ野ぬぬははは異こと異ことことにににしししててて野者殊異爲而
  5. 5心こころ心こころこころははは同おな同おなおなじじじ心者同
  6. 6おもはおもはおもわぬぬぬををを不想乎3100
  7. 7想おも想おもおもふふうととといはいはいわばばば想常云者
  8. 8眞ま眞まま鳥とり鳥とりとり住す住すすむむむ眞鳥住
  9. 9卯名手うなて卯名手うなてうなてののの社もり社もりもりののの卯名手乃社之
  10. 10神かみ神かみかみししし知し知ししらさらさらさむむん神思將御知

引用の仕方

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現代語訳

〔3099〕紫草を他の草と区別して伏す鹿のように、寝る野は別々であっても、心は同じだ。

〔3100〕思ってもいないのに思っていると言ったなら、(眞鳥住む)卯名手の社の神が、お見通しになるだろう。

意訳

草と社に寄せた歌で、寄物陳思の結びである。紫草を選んで伏す鹿のように、離れて寝ていても心は同じだという歌と、偽りの恋を口にすれば神がお見通しだという、誓いの歌が並ぶ。

語釈・文法注

文法・本文

紫草
「むらさき」。根から紫の染料をとる草。
別く別く
「わくわく」。区別して。
眞鳥住む
「卯名手」にかかる枕詞。
卯名手の社
大和の雲梯(うなて)の神社。

和歌

作者
作者未詳
出典
『万葉集』巻第十二・相聞・3099〜3100番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
作者未詳(時代を問わない)
状況
寄物陳思(草・社に寄せる)。作者未詳。

修辞

序詞
3099番の上三句が「野は異」を導く。

解説

3100番は神に誓って自分の心に偽りのないことを訴える歌で、恋の誓約の形をとる。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』下巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、483頁(コマ34)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』下巻 岩波書店、昭和5年(1930)、558頁(コマ43)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日