万葉集 巻第十二 3042〜3044番
朝日さす 春日の小野に
春日の小野に置く露のように消えてしまいそうな身は惜しくもない。露霜のように消えやすい身が老いても、また若返って君を待とう。君を待って庭にいると、黒髪に霜が置いてしまった。露・霜に寄せた歌三首。
場面イラスト(準備中)
題詞(物に寄せて思を陳ぶ)
- 1朝朝あさ日日ひさすさすさす朝日指3042
- 2春日春日かすがののの小小お野野ぬににに春日能小野爾
- 3置置おくくく露露つゆののの置露乃
- 4消消けぬぬぬべきべきべき吾吾わががが身身み可消吾身
- 5惜惜おしけくしけくしけくもももなしなしなし惜雲無
- 6露露つゆ霜霜じもののの露霜乃3043
- 7消消けやすきやすきやすき我我わががが身身み消安我身
- 8老老おいいいぬぬぬともともとも雖老
- 9またまたまた若若わか反反がえりりり又若反
- 10君君きみをををししし待待またたたむむん君乎思將待
- 11君君きみ待待まつつつととと待君常3044
- 12庭庭にはにににししし居居おれれればばば庭耳居者
- 13打打うち靡靡なびくくく打靡
- 14吾吾わががが黑黑くろ髮髮かみににに吾黑髮爾
- 15霜霜しもぞぞぞ置置おきききにににけるけるける霜曾置爾家類
現代語訳
〔3042〕朝日の差す春日の小野に置く露のように、消えてしまいそうな私の身は、惜しくもない。
〔3043〕露霜のように消えやすい私の身が老いても、また若返って、あなたを待とう。
〔3044〕あなたを待とうとして庭にばかりいたので、なびく私の黒髪に、霜が置いてしまったことだ。
意訳
露と霜に寄せた歌である。朝日にすぐ消える露のような身は惜しくないという恋の歌、露霜のようにはかない身が老いても若返って待とうという歌、恋人を待って夜の庭に立ち続け、黒髪に霜が置いたという歌が並ぶ。
語釈・文法注
文法・本文
- 露霜
- 「つゆじも」。露と霜、また露が凍ったもの。
- 若反り
- 「わかがへり」。若返って。
- 打靡く
- なびく。
和歌
- 作者
- 作者未詳
- 出典
- 『万葉集』巻第十二・相聞・3042〜3044番
- 歌体
- 短歌(五七五七七)
- 時期
- 作者未詳(時代を問わない)
- 状況
- 寄物陳思(露・霜に寄せる)。作者未詳。
修辞
- 序詞
- 3042番の上三句が「消」を導く。
- 対照
- 3044番は黒髪と白い霜を対比する。
解説
3044番は、磐姫皇后の作と伝える87番「ありつつも君をば待たむうち靡く吾が黒髪に霜の置くまでに」と通じる歌である。
関連
出典
- 底本
- 佐佐木信綱編『新訓万葉集』下巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、479頁(コマ32)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 原文
- 佐佐木信綱編『白文万葉集』下巻 岩波書店、昭和5年(1930)、553頁(コマ40)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日