古典ライブラリー

万葉集 巻第十二 2962〜2963番

白妙の 袖敷かずて宿る

作者未詳

恋人の袖を敷かずに独り寝る今夜は、明けるなら早く明けてしまえ。袂もゆったりと人が共寝する快い眠りは寝られず、恋い続けるのだろうか。作者未詳の正述心緒の歌の終わりの二首。

独り寝の床で、女が夜明けを待ちわびている

題詞(正に心緒を述ぶ)

  1. 1白しろ白しろしろ妙たへ妙たへたえののの白細之2962
  2. 2袖そで袖そでそで敷し敷ししかかかずずずててて宿ぬ宿ぬぬるるる袖不數而宿
  3. 3ぬばたまぬばたまぬばたまののの烏玉之
  4. 4今こ今ここ夜よひ夜よひよいははははやはやはやももも今夜者早毛
  5. 5明あ明ああけけけばばば明あ明ああけけけなむなむなん明者將開
  6. 6白しろ白しろしろ妙たへ妙たへたえののの白細之2963
  7. 7袂たもと袂たもとたもとゆたけくゆたけくゆたけく手本寛久
  8. 8人ひと人ひとひとののの宿ぬ宿ぬぬるるる人之宿
  9. 9味うま味うまうま寐い寐いいははは寢ね寢ねねずずずややや味宿者不寢哉
  10. 10戀こ戀ここひひいわたりわたりわたりなむなむなん戀將渡

引用の仕方

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現代語訳

〔2962〕白妙の袖を敷き交わさずに独り寝る、(ぬばたまの)今夜は、明けるなら早く明けてしまえ。

〔2963〕白妙の袂もゆったりと、人が共寝する快い眠りを、私は眠ることもなく、恋い続けるのだろうか。

意訳

作者未詳の正述心緒の歌の結びである。恋人と袖を交わさない独り寝の夜は早く明けてしまえという歌と、人が恋人とゆったり共寝する快い眠りを自分は知らずに恋い続けるのかという歌が並ぶ。

語釈・文法注

文法・本文

袖敷かず
恋人と袖を敷き交わさずに。
明けば明けなむ
明けるなら明けてしまえ。
ゆたけく
ゆったりと。
味寐
「うまい」。快い眠り。

和歌

作者
作者未詳
出典
『万葉集』巻第十二・相聞・2962〜2963番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
作者未詳(時代を問わない)
状況
正述心緒。作者未詳。

修辞

枕詞
「白妙の」「ぬばたまの」。

解説

2963番の「味寐」は、恋人と共に眠る満ち足りた眠りをいう、万葉集らしい語である。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』下巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、473頁(コマ29)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』下巻 岩波書店、昭和5年(1930)、546頁(コマ37)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日