古典ライブラリー

万葉集 巻第十 2349〜2350番

吾が屋戸に 咲きたる梅を

作者未詳

庭に咲いた梅を、月夜がよいので毎夜見せようと君を待っている。山の下風は吹かないのに、君のいない夕べは前もって寒い。巻第十の巻末、冬の相聞の歌二首。

冬の月夜、庭の梅の花の下で女が恋人の訪れを待っている

題詞花に寄す/夜に寄す

  1. 1吾わ吾わわががが屋戸やど屋戸やどやどににに吾屋戸爾2349 花
  2. 2咲さ咲ささきききたるたるたる梅うめ梅うめうめををを開有梅乎
  3. 3月つく月つくつく夜よ夜よよよみよみよみ月夜好美
  4. 4夕よひ夕よひよい夕よひ夕よひよい見み見みみせせせむむん夕夕令見
  5. 5君きみ君きみきみをををこそこそこそ待ま待ままててて君乎祚待也
  6. 6あしひきあしひきあしひきののの足檜木乃2350 夜
  7. 7山やま山やまやまののの下あら下あらあら風し風ししははは山下風波
  8. 8吹ふ吹ふふかかかねねねどもどもども雖不吹
  9. 9君きみ君きみきみなきなきなき夕よひ夕よひよいははは君無夕者
  10. 10豫かね豫かねかねててて寒さむ寒さむさむしししももも豫寒毛

引用の仕方

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現代語訳

〔2349〕わが家の庭に咲いた梅を、月夜がよいので、毎夜毎夜お見せしようと、あなたをこそ待っています。

〔2350〕(あしひきの)山おろしの風は吹かないけれども、あなたのいない夜は、前もって寒いことだ。

意訳

巻第十を結ぶ冬の相聞の二首である。月夜に照らされる庭の梅を毎夜見せようと恋人の訪れを待つ歌、山おろしの風が吹かなくても恋人のいない夜は寒いと嘆く歌で、巻第十は閉じられる。

語釈・文法注

文法・本文

夕夕
「よひよひ」。毎夜。
下風
「あらし」。山から吹きおろす激しい風。
豫て
「かねて」。前もって。

和歌

作者
作者未詳
出典
『万葉集』巻第十・相聞・2349〜2350番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
作者未詳(時代を問わない)
状況
冬の相聞。花と夜に寄せた恋の歌。巻第十の巻末。

修辞

枕詞
2350番の「あしひきの」が「山」にかかる。

解説

巻第十は春から冬へと四季を雑歌と相聞に分けて配列し、作者未詳の歌約540首を収める。2350番の、恋人のいない夜の寒さを嘆く歌で巻を閉じる。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』上巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、421頁(コマ214)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』上巻 岩波書店、昭和24年(1949)、482頁(コマ247)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日