古典ライブラリー

万葉集 巻第十 2087〜2088番

渡守 舟出し出でむ

作者未詳

渡し守よ、舟出をしよう。今夜だけ逢ってその後は逢わないというのではないのに。私が楫と棹を隠したので、渡し守は舟を貸すまい、しばらく待っていて。七夕歌二首。

天の川の舟着き場で、渡し守の舟の楫と棹が隠され、彦星が引き留められている

題詞(七夕)

  1. 1渡わたり渡わたりわたり守もり守もりもり渡守2087
  2. 2舟ふな舟ふなふな出で出ででししし出い出いいでででむむん舟出爲將出
  3. 3今こ今ここ夜よひ夜よひよいのみのみのみ今夜耳
  4. 4相あひ相あひあい見み見みみててて後のち後のちのちははは相見而後者
  5. 5逢あ逢ああははわじじじものものものかもかもかも不相物可毛
  6. 6吾わ吾わわががが隱かく隱かくかくせせせるるる吾隱有2088
  7. 7楫かぢ楫かぢかじ棹さを棹さをさお無な無ななくくくててて檝棹無而
  8. 8渡わたり渡わたりわたり守もり守もりもり渡守
  9. 9舟ふね舟ふねふね貸か貸かかさささめめめやややももも舟將借八方
  10. 10須臾しまし須臾しまししましはははありありあり待ま待ままててて須臾者有待

引用の仕方

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現代語訳

〔2087〕渡し守よ、舟出をして出かけよう。今夜だけ逢って、その後はもう逢わないというわけではないのだから。

〔2088〕私が隠してしまったので楫も棹もなくて、渡し守は舟を貸すことがあろうか。しばらくはそのまま待っていてください。

意訳

別れの朝の七夕歌である。今夜だけの仲ではないのだからと、帰りの舟出を急がせる彦星に対し、織女は楫と棹を隠してしまったから渡し守も舟を貸せないでしょう、しばらく待っていてと引き留める。

語釈・文法注

文法・本文

楫棹
「かぢさを」。舟を漕ぐ楫と棹。
須臾
「しまし」。しばらく。

和歌

作者
作者未詳
出典
『万葉集』巻第十・雑歌・2087〜2088番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
作者未詳(時代を問わない)
状況
七夕の歌。

修辞

問答
帰ろうとする彦星と、引き留める織女の問答のように並ぶ。

解説

楫を隠して恋人を引き留めるという発想に、地上の恋人たちの戯れが重ねられている。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』上巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、399頁(コマ203)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』上巻 岩波書店、昭和24年(1949)、455頁(コマ233)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日