万葉集 巻第十 2024〜2028番
萬世に 携はり居て
永遠に手を取り合っていても思い過ごせる恋ではない。永遠に照る月も雲に隠れれば苦しい、逢おうと思っても。白雲の幾重もの向こうで遠くても毎夜見よう妹のあたりを。私のためにと織女がその家で織った白布は織り上がっただろうか。君に逢わずに久しく織る白衣は垢づくまでに。七夕歌五首。
場面イラスト(準備中)
題詞(七夕)
- 1萬萬よろず世世よににに萬世2024
- 2携携たずさはりはりわり居居いててて携手居而
- 3相相あい見見みるるるともともとも相見鞆
- 4思思おもひひい過過すぐぐぐべきべきべき念可過
- 5戀戀こいならならならなくなくなくににに戀爾有莫國
- 6萬萬よろず世世よににに萬世2025
- 7照照てるるるべきべきべき月月つきももも可照月毛
- 8雲雲くも隱隱がくりりり雲隱
- 9苦苦くるしきしきしきものものものぞぞぞ苦物叙
- 10逢逢あははわむむんととと念念おもへへえどどど將相登雖念
- 11白白しら雲雲くもののの白雲2026
- 12五百五百いお重重へ隱隱がくりりりててて五百遍隱
- 13遠遠とおけどけどけどももも雖遠
- 14夜夜よ去去さらららずずず見見みむむむ夜不去將見
- 15妹妹いもががが邊邊あたりははは妹當者
- 16我我わがががためためためととと爲我登2027
- 17織女織女たなばたつめののの織女之
- 18そのそのその屋戸屋戸やどににに其屋戸爾
- 19織織おれれれるるる白白しろ布布たえ織白布
- 20織織おりりりてててけむけむけんかもかもかも織弖兼鴨
- 21君君きみににに逢逢あははわずずず君不相2028
- 22久久ひさしきしきしき時時ときゆゆゆ久時
- 23織織おるるる機機はたののの織服
- 24白白しろたへたへたえ衣衣ころも白栲衣
- 25垢垢あかづくづくずくまでまでまでににに垢附麻弖爾
現代語訳
〔2024〕永遠に手を取り合って逢っていたとしても、思いが過ぎ去ってしまうような恋ではないのに。
〔2025〕永遠に照るはずの月も、雲に隠れると苦しいものだ。逢おうと思っても。
〔2026〕白雲の幾重にも重なる向こうに隠れて遠くても、毎夜見よう、いとしい人のあたりを。
〔2027〕私のためにと、織女がその家で織っている白い布は、もう織り上がっただろうか。
〔2028〕あなたに逢わずに久しくなった時から、織っている機の白い衣は、垢じみてしまうほどになった。
意訳
七夕の歌の続きである。永遠に共にいても尽きない恋、雲に隠れる月のように逢えない苦しさ、白雲の彼方でも毎夜妹のあたりを見ようとする思い、自分のために織女が織る布を思いやる彦星、逢えない間に織り続けた白い衣が垢じみるほどになったと嘆く織女が詠まれている。
語釈・文法注
文法・本文
- 携はり居て
- 手を取り合っていて。
- 五百重
- 「いほへ」。幾重にも。
- 夜去らず
- 毎夜欠かさず。
- 垢づく
- 垢じみる。
和歌
- 作者
- 作者未詳
- 出典
- 『万葉集』巻第十・雑歌・2024〜2028番
- 歌体
- 短歌(五七五七七)
- 時期
- 第2期(672〜710年(壬申の乱〜平城京遷都))
- 状況
- 七夕の歌。柿本人麻呂歌集に出る。
修辞
- 反復
- 2024番・2025番は「萬世に」で始まる。
解説
織女が機を織る女神であることは、中国の伝説そのままである。
関連
出典
- 底本
- 佐佐木信綱編『新訓万葉集』上巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、395頁(コマ201)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 原文
- 佐佐木信綱編『白文万葉集』上巻 岩波書店、昭和24年(1949)、449頁(コマ230)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日