古典ライブラリー

万葉集 巻第十 1926〜1927番

春山の 馬醉木の花の

作者未詳

春山の馬酔木の花のように悪くないあなたとなら、ええままよ、噂を立てられてもかまわない。布留の神杉のように古びてしまった私が、改めて恋に出逢ったことだ。春の問答歌。

石上の社の古い神杉の下で、年配の男が若い女と向き合っている

題詞問答

  1. 1春はる春はるはる山やま山やまやまののの春山之1926 問
  2. 2馬醉木あしび馬醉木あしびあしびののの花はな花はなはなののの馬醉花之
  3. 3惡あ惡ああしからしからしからぬぬぬ不惡
  4. 4君きみ君きみきみにににはははしゑやしゑやしえや公爾波思惠也
  5. 5よそるよそるよそるともともともよしよしよし所因友好
  6. 6石上いそのかみ石上いそのかみいそのかみ石上1927 答
  7. 7布留ふる布留ふるふるののの神かむ神かむかむ杉すぎ杉すぎすぎ振乃神杉
  8. 8神かむ神かむかむさびさびさびにににししし神備西
  9. 9吾われ吾われわれやややさらさらさらさらさらさら吾八更更
  10. 10戀こひ戀こひこいににに逢あ逢ああひひいにににけるけるける戀爾相爾家留

引用の仕方

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現代語訳

〔1926〕春の山の馬酔木の花のように、悪くはないあなたとなら、ええままよ、噂を立てられてもかまわない。

〔1927〕(石上)布留の神杉のように年老いて古びてしまった私が、今さら改めて恋に出逢ったことだ。

意訳

女が、馬酔木の花のように好ましいあなたとなら噂になってもかまわないと歌いかけると、男は、布留の神杉のように年老いた自分が今さら恋に出逢うとはと、驚きと喜びをもって答える。

語釈・文法注

文法・本文

しゑや
ええままよ。投げやりな気持ちを表す感動詞。
よそる
噂で人と結びつけられる。
神さびにし
古びて神々しくなった、年老いた。
さらさら
今さら改めて。

和歌

作者
作者未詳
出典
『万葉集』巻第十・相聞・1926〜1927番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
作者未詳(時代を問わない)
状況
春の相聞の問答歌。1927番は春の歌ではないが、答えの歌なのでここに載せたと左注にある。

修辞

序詞
1926番の「春山の馬醉木の花の」が「惡しからぬ」を、1927番の「石上布留の神杉」が「神さび」を導く。

解説

「あしび」の「あし」から「惡し」を導く序詞は、同音を利用した技法である。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』上巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、386頁(コマ197)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』上巻 岩波書店、昭和24年(1949)、439頁(コマ225)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日