古典ライブラリー

万葉集 巻第十 1897〜1898番

春されば 百舌鳥の草潜

作者未詳

春になって百舌鳥が草にもぐって見えないように、あなたの姿は見えなくても、私はあなたの家のあたりを見やろう。容鳥がしきりに鳴く春の野の草の根のように、しげしげと恋をすることだ。鳥に寄せた恋の歌二首。

春の野の草むらにもずがもぐり込み、遠くに恋人の家の屋根が見える

題詞鳥に寄す

  1. 1春はる春はるはるされされさればばば春之在者1897
  2. 2百舌鳥もず百舌鳥もずもずののの草くさ草くさくさ潜ぐき潜ぐきぐき伯勞鳥之草具吉
  3. 3見み見みみえええずずずともともとも雖不所見
  4. 4吾われ吾われわれははは見み見みみ遣や遣ややらららむむん吾者見將遣
  5. 5君きみ君きみきみががが邊あたり邊あたりあたりをををばばば君之當乎婆
  6. 6容鳥かほどり容鳥かほどりかおどりののの容鳥之1898
  7. 7間ま間まま無な無ななくくく數しば數しばしば鳴な鳴ななくくく間無數鳴
  8. 8春はる春はるはるののの野ぬ野ぬぬののの春野之
  9. 9草くさ草くさくさ根ね根ねねののの繁しげ繁しげしげききき草根之繁
  10. 10戀こひ戀こひこいもももするするするかもかもかも戀毛爲鴨

引用の仕方

レポート・論文で引用する場合の表記例です。行番号を選んでから開くと、その行へのリンクになります。

現代語訳

〔1897〕春になると百舌鳥が草にもぐって見えなくなるように、あなたの姿は見えなくても、私は見やっていよう、あなたの家のあたりを。

〔1898〕容鳥が絶え間なくしきりに鳴く春の野の草の根が茂っているように、しげしげと恋をすることだ。

意訳

鳥に寄せた恋の歌である。草にもぐって姿の見えない百舌鳥のように、逢えない人の姿は見えなくても、せめてその家のあたりを眺めていようと歌い、容鳥がしきりに鳴く春の野の草の茂りにたとえて、絶え間ない恋心を歌う。

語釈・文法注

文法・本文

草潜
「くさぐき」。草の中にもぐること。
容鳥
「かほどり」。かっこうの類か。
數鳴く
「しばなく」。しきりに鳴く。

和歌

作者
作者未詳
出典
『万葉集』巻第十・相聞・1897〜1898番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
作者未詳(時代を問わない)
状況
鳥に寄せた恋の歌。

修辞

序詞
1897番の「春されば百舌鳥の草潜」が「見えず」を、1898番の上三句が「繁き」を導く。

解説

百舌鳥が春に人里を離れて姿を見せなくなることを「草潜」と言った。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』上巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、384頁(コマ196)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』上巻 岩波書店、昭和24年(1949)、436頁(コマ224)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日