古典ライブラリー

万葉集 巻第十 1887〜1888番

春日なる 三笠の山に

作者未詳

春日の三笠山に月が出てくれないか、佐紀山に咲いた桜の花が見えるように。白雪の降り敷く冬は過ぎたらしい、春霞のたなびく野辺で鶯が鳴いている。旋頭歌二首。

月の昇る三笠山の向こう、佐紀山の桜の花が月明かりに浮かんでいる

題詞旋頭歌

  1. 1春日かすが春日かすがかすがなるなるなる春日在1887
  2. 2三笠みかさ三笠みかさみかさののの山やま山やまやまににに三笠乃山爾
  3. 3月つき月つきつきももも出い出いいでででぬぬぬかもかもかも月母出奴可母
  4. 4佐紀さき佐紀さきさき山やま山やまやまににに佐紀山爾
  5. 5咲さ咲ささけけけるるる櫻さくら櫻さくらさくらののの開有櫻之
  6. 6花はな花はなはなののの見み見みみゆゆゆべくべくべく花乃可見
  7. 7白しら白しらしら雪ゆき雪ゆきゆきののの白雪之1888
  8. 8常つね常つねつね敷し敷ししくくく冬ふゆ冬ふゆふゆははは常敷冬者
  9. 9過す過すすぎぎぎにににけらしけらしけらしももも過去家良霜
  10. 10春はる春はるはる霞がすみ霞がすみがすみ春霞
  11. 11たなびくたなびくたなびく野ぬ野ぬぬ邊べ邊べべののの田菜引野邊之
  12. 12鶯うぐひす鶯うぐひすうぐいす鳴な鳴ななくくくををを鶯鳴焉

引用の仕方

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現代語訳

〔1887〕春日にある三笠の山に、月も出てくれないものか。佐紀山に咲いている桜の花が見えるように。

〔1888〕白雪がいつも降り敷く冬は過ぎてしまったらしい。春霞のたなびく野辺で、鶯が鳴いているのを聞くと。

意訳

旋頭歌二首である。夜の佐紀山の桜を見たいから、三笠山に月が出てほしいと願う歌と、霞のたなびく野辺の鶯の声に、雪の冬が過ぎて春になったことを知る歌である。

語釈・文法注

文法・本文

出でぬかも
出てくれないものか。
常敷く
いつも降り敷く。

和歌

作者
作者未詳
出典
『万葉集』巻第十・雑歌・1887〜1888番
歌体
旋頭歌(五七七五七七)
時期
作者未詳(時代を問わない)
状況
春の旋頭歌。

修辞

旋頭歌
五七七・五七七の形で、上下の句が問いと答えのように呼応する。

解説

三笠山は都の東、佐紀山は北にあり、月の光で遠くの桜を見ようとする趣向である。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』上巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、383頁(コマ195)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』上巻 岩波書店、昭和24年(1949)、434頁(コマ223)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日