万葉集 巻第十 1843〜1845番
昨日こそ 年は極てしか
昨日年が暮れたばかりなのに、春日の山にはもう霞が立った。冬が過ぎて春が来たらしい、春日の山に霞がたなびく。鶯の鳴く春になったらしい、夜目にも春日山に霞がたなびいて見える。霞を詠んだ歌三首。
場面イラスト(準備中)
題詞霞を詠める
- 1昨日昨日きのうこそこそこそ昨日社1843
- 2年年としははは極極はてててしかしかしか年者極之賀
- 3春春はる霞霞がすみ春霞
- 4春日春日かすがののの山山やまににに春日山爾
- 5はやはやはや立立たちちちにににけりけりけり速立爾來
- 6寒寒ふゆ過過すぎぎぎててて寒過1844
- 7暖暖はる來來きたるるるらしらしらし暖來良思
- 8朝朝あさ日日ひさすさすさす朝烏指
- 9春日春日かすがののの山山やまににに滓鹿能山爾
- 10霞霞かすみたなびくたなびくたなびく霞輕引
- 11鶯鶯うぐいすののの鶯之1845
- 12春春はるににになるなるなるらしらしらし春成良思
- 13春日春日かすが山山やま春日山
- 14霞霞かすみたなびくたなびくたなびく霞棚引
- 15夜夜よ目目めににに見見みれれれどもどもども夜目見侶
現代語訳
〔1843〕昨日年が暮れたばかりなのに、春霞が春日の山にもう立ったことだ。
〔1844〕冬が過ぎて春がやって来たらしい。朝日の差す春日の山に霞がたなびいている。
〔1845〕鶯の鳴く春になったらしい。春日山に霞がたなびいている。夜目に見ても。
意訳
春日山の霞に春の訪れを知る歌三首である。年が明けたばかりなのにもう霞が立った驚き、冬が過ぎて朝日に照らされる春日山の霞、夜目にもそれとわかる霞に、鶯の鳴く春になったことを感じ取っている。
語釈・文法注
文法・本文
- 極てしか
- 「はてしか」。終わったばかりなのに。
- 寒・暖
- 「ふゆ」「はる」と訓む。義訓。
- 夜目
- 夜に見ること。
和歌
- 作者
- 作者未詳
- 出典
- 『万葉集』巻第十・雑歌・1843〜1845番
- 歌体
- 短歌(五七五七七)
- 時期
- 作者未詳(時代を問わない)
- 状況
- 霞を詠んだ歌。
修辞
- 義訓
- 1844番の白文「寒」「暖」を「ふゆ」「はる」と訓む。
解説
立春と新年がほぼ重なる暦の上で、年明けとともに霞が立つことを春のしるしとした。
関連
出典
- 底本
- 佐佐木信綱編『新訓万葉集』上巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、379頁(コマ193)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 原文
- 佐佐木信綱編『白文万葉集』上巻 岩波書店、昭和24年(1949)、430頁(コマ221)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日