万葉集 巻第九 1795番
妹ら許 今木の嶺に
妻のもとへ今来たという名の今木の嶺に茂り立つ、妻を待つという名の松の木は、昔の人も見たことだろう。宇治若郎子の宮の跡で詠んだ歌。
場面イラスト(準備中)
題詞宇治若郎子の宮所の歌一首
現代語訳
妻のもとへ今来たという今木の嶺に茂り立つ、妻を待つという名の松の木は、昔の人も見たことだろう。
意訳
応神天皇の皇子で、兄の仁徳天皇に位を譲って亡くなったと伝える宇治若郎子の宮の跡で詠んだ歌である。「今来」「妻待つ」と、名に恋の意味をもつ山と松を見て、そこに住んだ昔の人をしのぶ。
語釈・文法注
文法・本文
- 妹ら許
- 「いもらがり」。妻のもとへ。「今(来)」にかかる。
- 嬬松
- 「つままつ」。妻を待つ松。
和歌
- 作者
- 作者未詳
- 出典
- 『万葉集』巻第九・挽歌・1795番
- 歌体
- 短歌(五七五七七)
- 時期
- 第2期(672〜710年(壬申の乱〜平城京遷都))
- 状況
- 宇治若郎子の宮の跡で詠んだ歌。柿本人麻呂歌集に出る。
修辞
- 枕詞
- 「妹ら許」が「今木」にかかる。
- 掛詞
- 「嬬松」に「妻待つ」をかける。
解説
菟道稚郎子は『日本書紀』に、兄の大鷦鷯尊(仁徳天皇)と皇位を譲り合い、自ら命を絶ったと伝えられる。
関連
出典
- 底本
- 佐佐木信綱編『新訓万葉集』上巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、366頁(コマ187)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 原文
- 佐佐木信綱編『白文万葉集』上巻 岩波書店、昭和24年(1949)、415頁(コマ213)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日