古典ライブラリー

万葉集 巻第九 1782〜1783番

雪こそは 春日消ゆらめ

作者未詳

雪なら春の日に消えもしよう、だがあなたの心まで消えてしまったのか、便りもよこさない。松のようにすねているのか、なかなか上って来ない麻呂という奴は。夫と妻の問答。

春の日差しに雪が溶けていく里で、夫からの便りを待つ妻がいる

題詞妻に與ふる歌一首/妻の和ふる歌一首

  1. 1雪ゆき雪ゆきゆきこそこそこそははは雪己曾波1782 夫
  2. 2春はる春はるはる日ひ日ひひ消き消ききゆゆゆらめらめらめ春日消良米
  3. 3心こころ心こころこころさへさへさへ心佐閉
  4. 4消き消ききえええ失う失ううせせせたれたれたれややや消失多列夜
  5. 5言こと言ことことももも通かよ通かよかよははわぬぬぬ言母不往來
  6. 6松まつ松まつまつ反がへ反がへがえりりり松反1783 妻
  7. 7澁し澁ししびびびてててありありありやややははは四臂而有八羽
  8. 8三みつ三みつみつ栗ぐり栗ぐりぐりののの三栗
  9. 9中なか中なかなかににに上のぼ上のぼのぼりりり來こ來ここずずず中上不來
  10. 10麻呂まろ麻呂まろまろととと云い云いいふふう奴やつこ奴やつこやつこ麻呂等言八子

引用の仕方

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現代語訳

〔1782〕雪ならば春の日に消えもしよう。けれどもあなたの心までも消え失せてしまったのか、便りも通って来ない。

〔1783〕(松反り)すねてぐずぐずしているのか、(三栗の)中ほどまで上って来ない、麻呂という奴は。

意訳

人麻呂歌集の夫婦の問答歌である。夫が、雪は春に消えるものだが、妻の心まで消えたのか便りもないとなじると、妻は、すねてなかなか会いに上って来ないのは麻呂という奴の方だと、夫の名をあげてやり返している。

語釈・文法注

文法・本文

松反り
「まつがへり」。「しび」にかかる枕詞か。
澁びて
しぶって、ぐずぐずして。
三栗の
「中」にかかる枕詞。
麻呂と云ふ奴
夫の名を呼んであなどった言い方。

和歌

作者
作者未詳
出典
『万葉集』巻第九・相聞・1782〜1783番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
第2期(672〜710年(壬申の乱〜平城京遷都))
状況
夫が妻に与えた歌と、妻が答えた歌。柿本人麻呂歌集に出る。

修辞

問答
夫の非難を、妻がそのまま夫に返す。
枕詞
「松反り」が「澁び」に、「三栗の」が「中」にかかる。

解説

「麻呂」を人麻呂自身とみて、人麻呂とその妻の問答とする説もある。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』上巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、363頁(コマ185)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』上巻 岩波書店、昭和24年(1949)、412頁(コマ212)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日