古典ライブラリー

万葉集 巻第九 1766番

吾妹子は 釧にあらなむ

振田向宿禰(ふるのたむけのすくね)

妻が腕輪であってほしい。そうすれば左手の奥の手に巻いて行けるのに。振田向宿禰が筑紫を去る時の歌。

筑紫を発つ旅人が、左手首に巻いた腕輪を見つめている

題詞振田向宿禰の筑紫國を退る時の歌一首

  1. 1吾わぎ吾わぎわぎ妹も妹もも子こ子ここははは吾妹兒者
  2. 2釧くしろ釧くしろくしろにににあらあらあらなむなむなん久志呂爾有奈武
  3. 3左ひだり左ひだりひだり手て手ててののの左手乃
  4. 4吾わ吾わわががが奧おく奧おくおくののの手て手ててににに吾奧手爾
  5. 5纒ま纒ままきききててて去い去いいなななましましましををを纒而去麻師乎

引用の仕方

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現代語訳

いとしい妻が腕輪であってくれたらよいのに。そうすれば、左手の、私の大切な手に巻いて行けるだろうに。

意訳

筑紫を離れるにあたり、妻(または筑紫で親しんだ女性)を残していくつらさを歌う。腕輪であれば、大切な左手に巻いて連れて行けるのにと願う。

語釈・文法注

文法・本文

釧
「くしろ」。腕輪。
奧の手
大切な手。左手を右手より尊んだともいう。
去なましを
行けるだろうに。

和歌

作者
振田向宿禰(未詳)
伝未詳。筑紫に赴任していた官人。
出典
『万葉集』巻第九・相聞・1766番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
第3期(710〜733年(平城京遷都〜山上憶良の没年ごろ))
状況
振田向宿禰が筑紫国を去る時の歌。

修辞

願望
「釧にあらなむ」と、人が物であればと願う。

解説

愛する人が玉や花であれば身につけて離れずにいられるのに、という発想は万葉集に多い。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』上巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、360頁(コマ184)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』上巻 岩波書店、昭和24年(1949)、409頁(コマ210)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日