古典ライブラリー

万葉集 巻第九 1694〜1695番

細領巾の 鷺坂山の

作者未詳

鷺坂山の白つつじよ、私に色を染めつけておくれ、妻に見せよう。妻の門を出入りするという泉川の滑らかな岩に、雪が残っている、まだ冬なのだろうか。鷺坂と泉川で作った旅の歌二首。

鷺坂山に白いつつじが咲き、泉川の岩には雪が残っている

題詞鷺坂にて作れる歌一首/泉河にて作れる歌一首

  1. 1細ほそ細ほそほそ領巾ひれ領巾ひれひれののの細比禮乃1694 鷺坂
  2. 2鷺坂さぎさか鷺坂さぎさかさぎさか山やま山やまやまののの鷺坂山
  3. 3白しら白しらしら躑躅つつじ躑躅つつじつつじ白管自
  4. 4吾われ吾われわれににに染にほ染にほにおははわねねね吾爾尼保波尼
  5. 5妹いも妹いもいもににに示しめ示しめしめさささむむん妹爾示
  6. 6妹いも妹いもいもががが門かど門かどかど妹門1695 泉河
  7. 7入い入いいりりり泉いづみ泉いづみいずみ河がは河がはがわののの入出見河乃
  8. 8常とこ常とことこ滑なめ滑なめなめににに床奈馬爾
  9. 9みみみ雪ゆき雪ゆきゆき殘のこ殘のこのこれれれりりり三雪遺
  10. 10いまだいまだいまだ冬ふゆ冬ふゆふゆかもかもかも未冬鴨

引用の仕方

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現代語訳

〔1694〕(細領巾の)鷺坂山の白つつじよ、私に色を染めつけておくれ。妻に見せよう。

〔1695〕(妹が門入り)泉川の滑らかな岩に雪が残っている。まだ冬なのだろうか。

意訳

1694番は、鷺坂山に咲く白つつじの色を衣に移して、旅のしるしとして妻に見せたいという歌、1695番は、春なのに泉川の岩に雪が残っているのを見て、まだ冬なのかと驚く歌である。

語釈・文法注

文法・本文

細領巾の
細い領巾が白いことから「鷺」にかかる枕詞。
妹が門入り
「出(いづ)」を導いて「泉」にかかる。
常滑
「とこなめ」。いつも滑らかな川床の岩。

和歌

作者
作者未詳
出典
『万葉集』巻第九・雑歌・1694〜1695番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
第2期(672〜710年(壬申の乱〜平城京遷都))
状況
鷺坂と泉川で作った旅の歌二首。

修辞

枕詞
「細領巾の」が「鷺坂」に、「妹が門入り」が「泉」にかかる。

解説

旅先の景物を妻へのみやげにしたいという、旅の歌の型である。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』上巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、348頁(コマ178)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』上巻 岩波書店、昭和24年(1949)、395頁(コマ203)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日