古典ライブラリー

万葉集 巻第八 1600〜1601番

妻戀に 鹿鳴く山邊の

石川広成(いしかわのひろなり)

妻を恋しがって鹿の鳴く山辺の秋萩は、露霜が寒いので、盛りが過ぎていく。あなたの家の花すすきが穂に出る秋の過ぎていくのが惜しい。内舎人石川広成の歌二首。

露霜の降りた山辺で萩が色あせ、遠くの屋敷の庭に花すすきが穂を出している

題詞內舍人石川朝臣廣成の歌二首

  1. 1妻つま妻つまつま戀ごひ戀ごひごいににに妻戀爾1600
  2. 2鹿しか鹿しかしか鳴な鳴ななくくく山やま山やまやま邊べ邊べべののの鹿鳴山邊之
  3. 3秋あき秋あきあき萩はぎ萩はぎはぎははは秋芽子者
  4. 4露つゆ露つゆつゆ霜じも霜じもじも寒さむ寒さむさむみみみ露霜寒
  5. 5盛さかり盛さかりさかりすぎすぎすぎ行ゆ行ゆゆくくく盛須疑由君
  6. 6めづらしきめづらしきめずらしき目頰布1601
  7. 7君きみ君きみきみががが家いへ家いへいえなるなるなる君之家有
  8. 8はなはなはな芒すすき芒すすきすすき波奈須爲寸
  9. 9穗ほ穗ほほににに出い出いいづるづるずる秋あき秋あきあきののの穗出秋乃
  10. 10過す過すすぐぐぐらくらくらく惜を惜ををしししももも過良久惜母

引用の仕方

レポート・論文で引用する場合の表記例です。行番号を選んでから開くと、その行へのリンクになります。

現代語訳

〔1600〕妻を恋しがって鹿の鳴く山辺の秋萩は、露霜が寒いので、盛りが過ぎていく。

〔1601〕すばらしいあなたの家にある花すすきの穂が出る秋が、過ぎていくのが惜しい。

意訳

1600番は、鹿の鳴く山辺の萩が露霜の寒さに盛りを過ぎていくさまを、1601番は、友人の家の花すすきが穂を出す美しい秋が過ぎていくのを惜しんでいる。

語釈・文法注

文法・本文

めづらしき
すばらしい、慕わしい。

和歌

作者
石川広成(生没年未詳)
奈良時代の官人。内舎人として大伴家持と同僚だった。
出典
『万葉集』巻第八・雑歌・1600〜1601番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
第4期(733〜759年(〜万葉集の最後の歌))
状況
内舎人石川広成の歌二首。

解説

家持の秋の歌に続けて並べられている。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』上巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、328頁(コマ168)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』上巻 岩波書店、昭和24年(1949)、369頁(コマ190)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日