古典ライブラリー

万葉集 巻第八 1513〜1514番

今朝の朝け 雁が音聞きつ

穂積皇子(ほづみのみこ)

今朝の明け方に雁の声を聞いた。春日山は黄葉したらしい。私の心が痛む。秋萩はもう咲くらしい、わが家の浅茅の花が散るのを見ると。穂積皇子の秋の歌二首。

明け方の空を雁の列が渡り、遠くの春日山が色づいている

題詞穗積皇子の御歌二首

  1. 1今け今けけ朝さ朝ささののの朝あさ朝あさあさけけけ今朝之旦開1513
  2. 2雁かり雁かりかりががが音ね音ねね聞き聞きききききつつつ鴈之鳴聞都
  3. 3春日かすが春日かすがかすが山やま山やまやま春日山
  4. 4黃もみ黃もみもみ葉ぢ葉ぢじにににけらしけらしけらし黃葉家良思
  5. 5吾わ吾わわががが情こころ情こころこころ痛いた痛いたいたししし吾情痛之
  6. 6秋あき秋あきあき萩はぎ萩はぎはぎははは秋芽者1514
  7. 7咲さ咲ささきききぬぬぬべからべからべからししし可咲有良之
  8. 8吾わ吾わわががが屋や屋やや戸ど戸どどののの吾家戸之
  9. 9淺あさ淺あさあさ茅ぢ茅ぢじががが花はな花はなはなののの淺茅之花乃
  10. 10散ち散ちちりりりぬるぬるぬる見み見みみれれればばば散去見者

引用の仕方

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現代語訳

〔1513〕今朝の明け方に、雁の声を聞いた。春日山は黄葉したらしい。私の心が痛む。

〔1514〕秋萩はもう咲くにちがいないらしい。わが家の浅茅の花が散っていくのを見ると。

意訳

1513番は、明け方の雁の声に秋の深まりを知り、春日山の黄葉を思いやって心を痛める歌、1514番は、浅茅の花が散るのを見て、萩の咲く季節が来たと知る歌である。

語釈・文法注

文法・本文

朝け
明け方。
咲きぬべからし
きっと咲くにちがいないらしい。

和歌

作者
穂積皇子(?–715)
天武天皇の皇子。但馬皇女との恋が知られる。
出典
『万葉集』巻第八・雑歌・1513〜1514番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
第2期(672〜710年(壬申の乱〜平城京遷都))
状況
穂積皇子の秋の歌二首。

解説

季節の移り変わりを、音と景物で感じとる繊細な歌である。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』上巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、316頁(コマ162)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』上巻 岩波書店、昭和24年(1949)、356頁(コマ184)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日