古典ライブラリー

万葉集 巻第八 1428番

押照る 難波を過ぎて

作者未詳

難波を過ぎて草香の山を夕暮れに越えてくると、山いっぱいに咲く馬酔木の花のように、心ひかれるあなたに、いつか早く行って逢いたい。草香山を越えたときの長歌。

夕暮れの草香山の山道に馬酔木の白い花が咲き満ち、旅人が峠を越えていく

題詞草香山の歌一首

  1. 1押おし押おしおし照て照ててるるる難波なには難波なにはなにわををを過す過すすぎぎぎててて忍照 難波乎過而
  2. 2うちうちうち靡なび靡なびなびくくく草香くさか草香くさかくさかののの山やま山やまやまををを打靡 草香乃山乎
  3. 3夕ゆふ夕ゆふゆう暮ぐれ暮ぐれぐれににに吾わ吾わわががが越こ越ここえええ來く來くくれれればばば暮晩爾 吾越來者
  4. 4山やま山やまやまももも狹せ狹せせににに咲さ咲ささけけけるるる馬あ馬ああ醉し醉しし木び木びびののの山毛世爾 咲有馬醉木乃
  5. 5惡あ惡ああしからしからしからぬぬぬ君きみ君きみきみををを何い何いい時つ時つつしかしかしか往ゆ往ゆゆきききてててはやはやはや見み見みみむむむ不惡 君乎何時 往而早將見

引用の仕方

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現代語訳

(押照る)難波を過ぎて、(うち靡く)草香の山を夕暮れに私が越えてくると、山も狭いほどに咲いている馬酔木の花のように、好ましいあなたに、いつか早く行って逢いたい。

意訳

難波から生駒山の西麓の草香山を越えて大和へ向かう旅の途中、山いっぱいに咲く馬酔木の花を見て、その花のように好ましい恋人に早く逢いたいと思う気持ちを歌っている。

語釈・文法注

文法・本文

山も狹に
山も狭く感じられるほどいっぱいに。
馬醉木の惡しからぬ
「あしび」の「あし」から「惡しからぬ」を導く。

和歌

作者
作者未詳
出典
『万葉集』巻第八・雑歌・1428番
歌体
長歌(五七をくり返し、五七七で結ぶ)
時期
作者未詳(時代を問わない)
状況
草香山を越えたときの長歌。作者の身分が低いので名を記さなかったと左注にある。

修辞

序詞
「山も狹に咲ける馬醉木の」が「惡しからぬ」を導く。
枕詞
「押照る」が「難波」に、「うち靡く」が「草香」にかかる。

解説

草香山は大阪府東大阪市日下町の生駒山西麓で、難波と大和を結ぶ道が通っていた。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』上巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、304頁(コマ156)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』上巻 岩波書店、昭和24年(1949)、340頁(コマ176)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日