万葉集 巻第七 1247〜1250番
大穴牟遲 少御神の
大国主と少彦名の神がお作りになった妹背の山は、見るのがよい。沖の藻の花、浮沼の池の菱、菅の実を採りに山路で迷う歌。旅で作った歌九十首の終わりの四首で、柿本人麻呂歌集の歌。
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題詞覊旅にて作れる(18)
- 1大穴牟遲大穴牟遲おおなむち大穴道1247
- 2少少すくな御御み神神かみののの少御神
- 3作作つくらしらしらしししし作
- 4妹妹いも背背せののの山山やまははは妹勢能山
- 5見見みらくらくらくしししよしよしよしももも見吉
- 6吾吾わぎ妹妹も子子こととと吾妹子1248
- 7見見みつつつつつつ偲偲しぬばばばむむん見偲
- 8沖沖おきつつつ藻藻もののの奧藻
- 9花花はな咲咲さきききたらたらたらばばば花開在
- 10我我われににに告告つげげげこそこそこそ我告與
- 11君君きみがががためためため君爲1249
- 12浮沼浮沼うきぬののの池池いけののの浮沼池
- 13菱菱ひし採採つむむむととと菱採
- 14我我わががが染染しめめめししし袖袖そで我染袖
- 15ぬれぬれぬれにににたるたるたるかもかもかも沾在哉
- 16妹妹いもがががためためため妹爲1250
- 17菅菅すがののの實實み採採とりりりににに菅實採
- 18行行ゆきききししし吾吾われ行吾
- 19山山やま路路じにににまどひまどひまどい山路惑
- 20このこのこの日日ひ暮暮くらしらしらしつつつ此日暮
現代語訳
〔1247〕大穴牟遅と少御神がお作りになった妹背の山は、見るのがよいことだ。
〔1248〕いとしい妻だと思って見ながら賞美しよう。沖の藻の花が咲いたら、私に知らせておくれ。
〔1249〕あなたのために浮沼の池の菱の実を摘もうとして、私が染めた袖は、濡れてしまったことだ。
〔1250〕妻のために菅の実を採りに行った私は、山道に迷って、この一日を暮らしてしまった。
意訳
旅の歌九十首を結ぶ人麻呂歌集の四首である。国作りの神、大国主と少彦名が作ったという妹背の山の眺めをたたえる歌、沖の藻の花を妻と思って見たいという歌、恋人のために菱の実を摘んで袖を濡らした女の歌、妻のために菅の実を採りに行って山道に迷った男の歌が並ぶ。
語釈・文法注
文法・本文
- 大穴牟遲
- 「おほなむち」。大国主神。
- 少御神
- 少彦名神。大国主とともに国作りをした神。
- 見らくしよしも
- 見るのはよいものだ。
和歌
- 作者
- 作者未詳
- 出典
- 『万葉集』巻第七・雑歌・1247〜1250番
- 歌体
- 短歌(五七五七七)
- 時期
- 第2期(672〜710年(壬申の乱〜平城京遷都))
- 状況
- 巻第七の雑歌のうち、「覊旅にて作れる」歌九十首の終わりの四首。柿本人麻呂歌集に出る。
解説
国作りの神々が山を作ったという伝承は、巻第三の355番(生石村主真人「大汝少彦名のいましけむ」)にも見える。
関連
出典
- 底本
- 佐佐木信綱編『新訓万葉集』上巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、273頁(コマ140)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 原文
- 佐佐木信綱編『白文万葉集』上巻 岩波書店、昭和24年(1949)、300頁(コマ156)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日