古典ライブラリー

万葉集 巻第六 1016番

海原の 遠き渡を

作者未詳

海原の遠い海路を、風流な人々の遊ぶのを見ようと、波にもまれてやって来た。蓬莱の仙女の作として宴席の壁に貼られた、趣向をこらした歌。

屋敷の広間の壁に白い紙に書かれた歌が貼られ、宴の人々がそれを見上げている。紙の向こうに、海を渡る仙女の姿がおぼろに描かれている

題詞春二月、諸大夫等、左少辨巨勢宿奈麻呂朝臣の家に集ひて宴せる歌一首

  1. 1海うな海うなうな原はら原はらはらののの海原之
  2. 2遠とほ遠とほとおききき渡わたり渡わたりわたりををを遠渡乎
  3. 3遊みや遊みやみや士びを士びをびおののの遊士之
  4. 4遊あそ遊あそあそぶぶぶををを見み見みみむむむととと遊乎將見登
  5. 5なづさひなづさひなずさいぞぞぞ來こ來ここししし莫津左比曾來之

引用の仕方

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現代語訳

海原の遠い海路を、風流な人々の遊ぶのを見ようと、波にもまれながらやって来たのです。

意訳

宴の部屋の壁に、白い紙に書いた歌が貼られていた。蓬莱山の仙女が、風流な人々の遊ぶさまを見たいと、はるかな海を渡ってやって来たという趣向で、宴に集う人々を「みやびを」とほめたたえている。

語釈・文法注

文法・本文

遊士
「みやびを」は風流な人。
なづさひ
水に浮かび漂って、難儀して。

和歌

作者
作者未詳
出典
『万葉集』巻第六・雑歌・1016番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
第4期(733〜759年(〜万葉集の最後の歌))
状況
天平9年(737)2月、諸大夫が巨勢宿奈麻呂の家に集まって宴をしたときの歌。作者は記されず、蓬莱の仙女の作として壁に貼られていた。

解説

神仙思想を取り入れた、奈良時代の宴の遊び心がうかがえる歌である。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』上巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、245頁(コマ126)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』上巻 岩波書店、昭和24年(1949)、267頁(コマ139)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日