古典ライブラリー

万葉集 巻第六 1011〜1012番

わが屋戸の 梅咲きたりと

作者未詳

わが家の梅が咲いたと知らせたら、来いと言っているようなものだ。散ってしまってもかまわない。歌儛所の人々が葛井広成の家に集い、古風な歌を試みた宴の歌二首。

冬の屋敷の庭に梅がほころび、築山のある庭で鶯が鳴いている。広間では人々が古い歌を唱和している

題詞冬十二月十二日、歌儛所の諸王臣子等、葛井連廣成の家に集ひて宴せる歌二首

  1. 1わがわがわが屋や屋やや戸ど戸どどののの我屋戸之1011
  2. 2梅うめ梅うめうめ咲さ咲ささきききたりたりたりととと梅咲有跡
  3. 3告つ告つつげげげやらやらやらばばば告遣者
  4. 4來こ來ここちちちふふうににに似に似ににたりたりたり來云似有
  5. 5散ち散ちちりりりぬぬぬともともともよしよしよし散去十方吉
  6. 6春はる春はるはるさらさらさらばばば春去者1012
  7. 7ををりををりおおりにににををりををりおおり乎呼理爾乎呼里
  8. 8鶯うぐひす鶯うぐひすうぐいすののの鶯之
  9. 9鳴な鳴ななくくく吾わ吾わわががが山齋しま山齋しましまぞぞぞ鳴吾島曾
  10. 10止や止ややまままずずず通かよ通かよかよははわせせせ不息通爲

引用の仕方

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現代語訳

〔1011〕わが家の梅が咲いたと知らせてやったら、来いと言っているのに似ている。(だから知らせない。)散ってしまってもかまわない。

〔1012〕春になれば、枝もたわむほどに花が咲き、鶯の鳴くわが家の庭だ。絶えず通っていらっしゃい。

意訳

天平8年(736)12月、宮中の歌舞を司る歌儛所の人々が、葛井広成の家で宴をした。近ごろ古い歌舞が盛んなので、古風な歌の心で歌おうと序に述べ、二首を献じている。1011番は、梅が咲いたと知らせれば来てくれとせがむようで気が引けるから、散ってもかまわないと、はにかんだ思いを歌う。1012番は一転して、春には花が咲き鶯が鳴く庭だから、いつでも通ってきてほしいと誘っている。

語釈・文法注

文法・本文

來ちふ
「來といふ」のつづまった形。来いと言う。
ををりにををり
枝がたわむほどに花が咲き茂るさま。
山齋
「しま」は池や築山のある庭。

和歌

作者
作者未詳
出典
『万葉集』巻第六・雑歌・1011〜1012番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
第4期(733〜759年(〜万葉集の最後の歌))
状況
天平8年(736)12月12日、歌儛所の王族・官人たちが葛井広成の家に集まって宴をしたときの歌。

修辞

反復
1012番の「ををりにををり」。

解説

古い歌謡の調子をまねて作られた歌で、奈良時代の官人たちの古風への関心がうかがえる。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』上巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、243頁(コマ125)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』上巻 岩波書店、昭和24年(1949)、266頁(コマ139)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日