古典ライブラリー

万葉集 巻第六 1010番

奧山の 眞木の葉凌ぎ

橘奈良麻呂(たちばなのならまろ)

奥山の真木の葉を押し伏せて降る雪は、どれほど降り積もっても、地に落ちることがあろうか。橘の姓を賜ったときに、父の諸兄とともに詔に応えた橘奈良麻呂の歌。

深い山の杉や檜の葉に雪が厚く積もり、葉が重みでしなっている

題詞橘宿禰奈良麿、詔に應ずる歌一首

  1. 1奧おく奧おくおく山やま山やまやまののの奧山之
  2. 2眞ま眞まま木き木ききののの葉は葉はは凌しの凌しのしのぎぎぎ眞木葉凌
  3. 3零ふ零ふふるるる雪ゆき雪ゆきゆきののの零雪乃
  4. 4零ふ零ふふりりりははは益ま益まますすすともともとも零者雖益
  5. 5地つち地つちつちににに落お落おおちちちめめめやもやもやも地爾落目八方

引用の仕方

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現代語訳

奥山の真木の葉を押し伏せて降る雪は、どれほど降りまさっても、地に落ちることがあろうか。

意訳

前の1009番の御製に応えて、橘氏の側から詠んだ歌である。真木の葉に積もる雪がどれほど重く降っても地に落ちないように、橘氏はどんなことがあっても衰えることはないと、一族の繁栄を誓っている。

語釈・文法注

文法・本文

葉凌ぎ
葉を押さえつけて。
落ちめやも
「めやも」は反語。落ちることがあろうか、ない。

和歌

作者
橘奈良麻呂(721?–757)
橘諸兄の子。のちに藤原仲麻呂を除こうとして事が露見し(橘奈良麻呂の変)、獄死したとみられる。
出典
『万葉集』巻第六・雑歌・1010番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
第4期(733〜759年(〜万葉集の最後の歌))
状況
天平8年(736)11月、葛城王らに橘の姓を賜った宴で、橘奈良麻呂が詔に応えて詠んだ歌。

修辞

反語
「落ちめやも」。

解説

奈良麻呂はこのとき十代半ばとみられる。のちに謀反の罪で失脚したことを思うと、一族の不滅を誓うこの歌は感慨深い。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』上巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、243頁(コマ125)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』上巻 岩波書店、昭和24年(1949)、266頁(コマ139)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日