古典ライブラリー

万葉集 巻第四 666〜667番

相見ぬは

大伴坂上郎女(おおとものさかのうえのいらつめ)

逢わずにいたのはそれほど久しくもないのに、どうしてこんなに恋しいのか。恋い続けてやっと逢えたのだから、月があるので夜はまだ隠れているだろう、しばらくいて待っていて。安倍虫麻呂に答えた坂上郎女の歌。

月明かりの部屋で、帰ろうとする男を、女性が袖を引いて引き留めている

題詞大伴坂上郎女の歌二首

  1. 1相あひ相あひあい見み見みみぬぬぬははは不相見者666
  2. 2幾いく幾いくいく久ばく久ばくばくももも幾久毛
  3. 3あらあらあらなくなくなくににに不有國
  4. 4幾許ここだく幾許ここだくここだく吾われ吾われわれははは幾許吾者
  5. 5戀こ戀ここひひいつつつつつつもももあるあるあるかかか戀乍裳荒鹿
  6. 6戀こ戀ここひひい戀こ戀ここひひいててて戀戀而667
  7. 7逢あ逢ああひひいたるたるたるものものものををを相有物乎
  8. 8月つき月つきつきしししあれあれあればばば月四有者
  9. 9夜よ夜よよははは隱こも隱こもこもるるるらむらむらん夜波隱良武
  10. 10須臾しまし須臾しまししましははは在あ在あありりり待ま待ままててて須臾羽蟻待

引用の仕方

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現代語訳

〔666〕逢わずにいたのは、それほど久しくもないのに、どうしてこんなにも私は恋しく思い続けているのか。

〔667〕恋い続けてやっと逢えたのに。月が出ているので、夜はまだこもっているでしょう。しばらくはここにいて待っていてください。

意訳

安倍虫麻呂の歌に答えた坂上郎女の二首。逢わずにいたのはそれほど長くないのに、なぜこんなに恋しいのかと歌い、帰ろうとする相手に、月が明るいからまだ夜は明けていないでしょう、もうしばらくいてくださいと引き留める。左注によれば、従兄妹どうしの親しさから交わした戯れの問答である。

語釈・文法注

文法・本文

夜は隱るらむ
夜はまだ明けずにこもっているだろう。
在り待て
このままいて待て。

和歌

作者
大伴坂上郎女(生没年未詳)
大伴安麻呂の娘で、旅人の異母妹。家持の叔母で、のちに姑となった。万葉集の女性歌人のうち最も多くの歌を残した。
出典
『万葉集』巻第四・相聞・666〜667番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
第3期(710〜733年(平城京遷都〜山上憶良の没年ごろ))
状況
665番の安倍虫麻呂の歌に、大伴坂上郎女が答えた歌二首。

解説

原文の「蟻待」は「ありまて」と読ませる戯書で、言葉遊びの楽しさがある。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』上巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、170頁(コマ89)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』上巻 岩波書店、昭和24年(1949)、180頁(コマ96)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日