古典ライブラリー

万葉集 巻第四 625番

奥方行き 邊に行き今や

高安王(たかやすのおおきみ)

沖へ行き岸へ行き、今あなたのために私がとってきた、藻の中に寝ている一握りの鮒です。包んだ鮒を娘子に贈った高安王の歌。

男が、藻にくるんだ小さな鮒の包みを、使いに持たせて女性のもとへ届けさせている

題詞高安王、裹める鮒を娘子に贈れる歌一首

  1. 1奧おき奧おきおき方へ方へへ行ゆ行ゆゆききき奥幣徃
  2. 2邊へ邊へへににに行ゆ行ゆゆききき今いま今いまいまややや邊去伊麻夜
  3. 3妹いも妹いもいもがががためためため爲妹
  4. 4吾わ吾わわががが漁すなど漁すなどすなどれれれるるる吾漁有
  5. 5藻も藻もも臥ふし臥ふしふし束つか束つかつか鮒ぶな鮒ぶなぶな藻臥束鮒

引用の仕方

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現代語訳

沖の方へ行き、岸の方へ行き、今まさにあなたのために、私がとってきた、藻の中に寝ている一握りほどの鮒です。

意訳

高安王は、沖へ岸へと苦労してとった小さな鮒を藻に包み、恋しい娘に贈った。あなたのためにこんなに苦労したのですよと、贈り物にユーモアをこめて添えた歌である。

語釈・文法注

文法・本文

束鮒
一握り(一束)ほどの大きさの鮒。

和歌

作者
高安王(?–742)
奈良時代の皇族で、のちに大原真人の姓を賜った。摂津大夫などを務めた。
出典
『万葉集』巻第四・相聞・625番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
第3期(710〜733年(平城京遷都〜山上憶良の没年ごろ))
状況
高安王が、包んだ鮒を娘子に贈ったときの歌。

修辞

体言止め
「藻臥束鮒」と名詞で結ぶ。

解説

贈り物に添える歌の例で、生活感のある素朴な恋の歌である。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』上巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、165頁(コマ86)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』上巻 岩波書店、昭和24年(1949)、174頁(コマ93)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日