古典ライブラリー

万葉集 巻第四 624番

道に逢ひて

聖武天皇(しょうむてんのう)

道で逢ってほほえんだばかりに、降る雪が消えるなら消えてしまいそうなほど恋しいと言う、いとしい人よ。聖武天皇が酒人女王を思って詠んだ歌。

雪の降る道で、若い女王が恥ずかしそうにほほえみ、行列の中の天皇がそれを見つめている

題詞天皇、酒人女王を思びます御製の歌一首

  1. 1道みち道みちみちににに逢あ逢ああひひいててて道相而
  2. 2咲ゑ咲ゑえましましまししししからからからににに咲之柄爾
  3. 3零ふ零ふふるるる雪ゆき雪ゆきゆきののの零雪乃
  4. 4消け消けけなななばばば消け消けけぬぬぬがががににに消者消香二
  5. 5戀こ戀ここふふうとととふふふ吾わぎ吾わぎわぎ妹も妹もも戀云吾妹

引用の仕方

レポート・論文で引用する場合の表記例です。行番号を選んでから開くと、その行へのリンクになります。

現代語訳

道で逢って、ほほえみかけただけで、降る雪が消えるなら消えてしまいそうなほど、恋しいと言うあなたよ。

意訳

道で出会った時にほほえみかけただけなのに、降る雪のように身も消え入りそうなほど恋しいと言う酒人女王を、天皇はいとおしく思う。

語釈・文法注

文法・本文

咲まししからに
ほほえまれたばかりに。
消なば消ぬがに
消えるなら消えてしまいそうなほど。

和歌

作者
聖武天皇(701–756)
文武天皇の皇子。奈良時代の天皇で、東大寺の大仏を造立した。
出典
『万葉集』巻第四・相聞・624番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
第3期(710〜733年(平城京遷都〜山上憶良の没年ごろ))
状況
天皇(聖武天皇)が酒人女王を思って詠んだ歌。

修辞

序詞
「零る雪の」が「消なば消ぬがに」を導く。

解説

酒人女王は穂積皇子の孫とされる。天皇の御製の恋歌として貴重である。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』上巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、165頁(コマ86)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』上巻 岩波書店、昭和24年(1949)、174頁(コマ93)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日