古典ライブラリー

万葉集 巻第四 577番

吾が衣 人にな着せそ

大伴旅人(おおとものたびと)

私の贈る衣を、ほかの人には着せないでほしい。網を引く難波の男たちの手には触れたとしても。新しい袍を高安王に贈った大伴旅人の歌。

新しい官人の袍を包んだ贈り物を、初老の貴人が使者に手渡している

題詞大納言大伴卿、新しき袍を攝津大夫高安王に贈れる歌一首

  1. 1吾わ吾わわががが衣ころも衣ころもころも吾衣
  2. 2人ひと人ひとひとにににななな着き着ききせせせそそそ人莫著曾
  3. 3網あ網ああ引びき引びきびきするするする網引爲
  4. 4難波なには難波なにはなにわ壯を壯をお士とこ士とことこののの難波壯士乃
  5. 5手て手ててにににははは觸ふ觸ふふるるるともともとも手爾者雖觸

引用の仕方

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現代語訳

私の贈る衣を、ほかの人に着せてはいけない。網を引く難波の男たちの手に触れることはあっても。

意訳

旅人は、摂津大夫の高安王に新しい袍(上着)を贈り、ほかの人には着せないでくれと添えた。難波の漁師たちの手に触れるのは仕方がないが、と冗談めかしている。親しい友への贈り物に添えた、軽妙な歌である。

語釈・文法注

文法・本文

袍
「うへのきぬ」は官人が朝廷で着る上着。

和歌

作者
大伴旅人(665–731)
大伴安麻呂の子で、家持の父。大宰帥として筑紫に赴任し、山上憶良らと筑紫歌壇を形づくった。
出典
『万葉集』巻第四・相聞・577番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
第3期(710〜733年(平城京遷都〜山上憶良の没年ごろ))
状況
大納言の大伴旅人が、摂津大夫の高安王に新しい袍を贈ったときの歌。

解説

摂津職は難波を管轄したので、「難波壮士」が出てくる。旅人の晩年の、穏やかな交友を伝える歌である。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』上巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、160頁(コマ84)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』上巻 岩波書店、昭和24年(1949)、168頁(コマ90)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日