万葉集 巻第四 585番
出でて去なむ
出て行くべき時はあるだろうに、わざと妻を恋しく思いながら立ち去ってよいものか。娘のもとを去る家持を引き留める坂上郎女の歌。
場面イラスト(準備中)
題詞大伴坂上郎女の歌一首
現代語訳
出て行くべき時はほかにもあるでしょうに、わざわざ妻を恋しく思いながら、立ち去ってよいものでしょうか。
意訳
娘の大嬢のもとに通ってきた家持が、帰ろうとしている。郎女は、帰る時はほかにもあるだろうに、恋しい思いを残したまま、わざわざ今立ち去ることはないでしょうと引き留める。娘婿となる甥への、母親らしい心づかいの歌である。
語釈・文法注
文法・本文
- 故らに
- わざわざ。
- 立ちて去ぬべしや
- 反語。立ち去ってよいだろうか。
和歌
- 作者
- 大伴坂上郎女(生没年未詳)
大伴安麻呂の娘で、旅人の異母妹。家持の叔母で、のちに姑となった。万葉集の女性歌人のうち最も多くの歌を残した。 - 出典
- 『万葉集』巻第四・相聞・585番
- 歌体
- 短歌(五七五七七)
- 時期
- 第3期(710〜733年(平城京遷都〜山上憶良の没年ごろ))
- 状況
- 大伴坂上郎女の歌。
解説
坂上郎女は、娘の大嬢と家持との恋を見守り、ときに娘に代わって歌を詠んだ。
関連
出典
- 底本
- 佐佐木信綱編『新訓万葉集』上巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、161頁(コマ84)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 原文
- 佐佐木信綱編『白文万葉集』上巻 岩波書店、昭和24年(1949)、169頁(コマ90)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日