古典ライブラリー

万葉集 巻第四 563〜564番

黑髮に 白髮交り

大伴坂上郎女(おおとものさかのうえのいらつめ)

黒髪に白髪がまじるほど年を取るまで、こんな恋にはまだ出会ったことがない。山菅の実がならないように実を結ばない恋を、私のせいにされたあなたは、誰と寝ているのだろう。大伴百代の歌に答えた坂上郎女の歌。

鏡の前で、女性が黒髪の中の白い一筋を見つけて、苦笑いを浮かべている

題詞大伴坂上郎女の歌二首

  1. 1黑くろ黑くろくろ髮かみ髮かみかみににに黑髮二563
  2. 2白しろ白しろしろ髮かみ髮かみかみ交まじ交まじまじりりり白髮交
  3. 3老お老おおゆるゆるゆるまでまでまで至耆
  4. 4斯か斯かかかるかるかる戀こひ戀こひこいにににははは如是有戀庭
  5. 5いまだいまだいまだ逢あ逢ああははわなくなくなくににに未相爾
  6. 6山やま山やまやま菅すげ菅すげすげののの山菅之564
  7. 7實み實みみ成な成なならららぬぬぬことことことををを實不成事乎
  8. 8吾われ吾われわれににに依よ依よよせせせ吾爾所依
  9. 9言い言いいははわれれれししし君きみ君きみきみははは言禮師君者
  10. 10誰たれ誰たれたれとととかかか宿ぬ宿ぬぬらむらむらむ與孰可宿良牟

引用の仕方

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現代語訳

〔563〕黒髪に白髪がまじって年を取るまで、こんな恋には、まだ出会ったことがないのに。

〔564〕山菅が実を結ばないように実らない恋を、私のせいにして言いふらされたあなたは、今ごろ誰と寝ているのだろう。

意訳

559番以下の大伴百代の歌に、坂上郎女が答えたものとみられる。563番は、白髪まじりになるまでこんな恋には会ったことがないと、百代の「老いらくの恋」をからかうように受ける。564番は、実らない恋を私のせいにして人に言いふらしたあなたは、今ごろ誰と寝ているのかと、軽く皮肉っている。

語釈・文法注

文法・本文

依せ言はれし
人に言い寄せられた、私のせいにして言われた。

和歌

作者
大伴坂上郎女(生没年未詳)
大伴安麻呂の娘で、旅人の異母妹。家持の叔母で、のちに姑となった。万葉集の女性歌人のうち最も多くの歌を残した。
出典
『万葉集』巻第四・相聞・563〜564番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
第3期(710〜733年(平城京遷都〜山上憶良の没年ごろ))
状況
大伴坂上郎女の歌二首。

修辞

序詞
564番の「山菅の」が「實成らぬ」を導く。

解説

大宰府での宴で、百代の歌に郎女が応じた戯れの贈答とみられる。郎女は兄の旅人を訪ねて大宰府に下っていた。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』上巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、158頁(コマ83)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』上巻 岩波書店、昭和24年(1949)、166頁(コマ89)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日