古典ライブラリー

万葉集 巻第四 555番

君がため 釀みし待酒

大伴旅人(おおとものたびと)

あなたのために醸して待っていた酒を、安の野でひとりで飲むのだろうか、友もいなくて。都へ転任する丹比県守に、大伴旅人が贈った歌。

野の中で、初老の貴人がひとり、酒の入った杯を手にして、去っていく友の方を見ている

題詞太宰帥大伴卿、大貳丹比縣守卿の民部卿に遷任せらるるに贈れる歌一首

  1. 1君きみ君きみきみがががためためため爲君
  2. 2釀か釀かかみみみししし待まち待まちまち酒ざけ酒ざけざけ釀之待酒
  3. 3安やす安やすやすののの野ぬ野ぬぬににに安野爾
  4. 4獨ひとり獨ひとりひとりややや飮の飮ののまままむむん獨哉將飮
  5. 5友とも友ともとも無な無ななしししにににしししててて友無二思手

引用の仕方

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現代語訳

あなたのために醸して待っていた酒を、安の野で、ひとりで飲むことになるのだろうか。友もいなくて。

意訳

大宰大弐の丹比県守が民部卿として都へ転任することになった。旅人は、県守と飲もうと用意していた酒を、友のいなくなった安の野でひとりで飲むのかと、別れの寂しさを歌う。酒を愛した旅人らしい送別の歌である。

語釈・文法注

文法・本文

待酒
人を迎えるために用意しておく酒。
安の野
筑前国夜須郡(福岡県朝倉郡筑前町)の野。

和歌

作者
大伴旅人(665–731)
大伴安麻呂の子で、家持の父。大宰帥として筑紫に赴任し、山上憶良らと筑紫歌壇を形づくった。
出典
『万葉集』巻第四・相聞・555番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
第3期(710〜733年(平城京遷都〜山上憶良の没年ごろ))
状況
大宰帥の大伴旅人が、大弐の丹比県守が民部卿に転任するときに贈った歌。

解説

旅人の歌には酒が多く詠まれる。友と飲むはずだった酒をひとりで飲む寂しさに、別れの思いがこめられている。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』上巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、157頁(コマ82)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』上巻 岩波書店、昭和24年(1949)、165頁(コマ88)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日