古典ライブラリー

万葉集 巻第四 529番

佐保河の 岸のつかさの

大伴坂上郎女(おおとものさかのうえのいらつめ)

佐保川の岸の高みの柴を刈らないでおくれ。そのままにしておいて、春が来たら、そこに隠れて逢うのだから。坂上郎女の旋頭歌。

佐保川の岸の小高い所に柴が茂り、若い男女がその陰に隠れて語り合っている

題詞また、大伴坂上郎女の歌一首

  1. 1佐保さほ佐保さほさほ河がは河がはがわののの佐保河乃
  2. 2岸きし岸きしきしのののつかさつかさつかさののの涯之官能
  3. 3柴しば柴しばしばななな刈か刈かかりりりそそそねねね小歷木莫刈焉
  4. 4在あ在あありりりつつつつつつももも在乍毛
  5. 5春はる春はるはるししし來きた來きたきたらららばばば張之來者
  6. 6立た立たたちちち隱かく隱かくかくるるるがねがねがね立隱金

引用の仕方

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現代語訳

佐保川の岸の小高い所の柴を刈らないでおくれ。そのままにしておいて、春が来たら、立ち隠れる場所にするのだから。

意訳

佐保川の岸の高みに茂る柴を、刈らないでおいてほしいと頼む。春が来たら、その陰に隠れて恋人と逢うつもりだからである。旋頭歌の形で、民謡風の明るさがある。

語釈・文法注

文法・本文

つかさ
小高い所。
立ち隱るがね
「がね」は目的。立ち隠れるために。
春し來らば
原文は「張之來者」と書く。

和歌

作者
大伴坂上郎女(生没年未詳)
大伴安麻呂の娘で、旅人の異母妹。家持の叔母で、のちに姑となった。万葉集の女性歌人のうち最も多くの歌を残した。
出典
『万葉集』巻第四・相聞・529番
歌体
旋頭歌(五七七五七七)
時期
第3期(710〜733年(平城京遷都〜山上憶良の没年ごろ))
状況
大伴坂上郎女の旋頭歌。

解説

五七七・五七七の旋頭歌で、もとは問答や歌謡の形式であった。郎女は古い歌の形を借りて、軽やかに恋を歌っている。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』上巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、153頁(コマ80)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』上巻 岩波書店、昭和24年(1949)、160頁(コマ86)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日