万葉集 巻第四 514番
吾背子が 著せる衣の
私の夫が着ている衣の針目ひとつひとつに、私の心までも入ってしまったらしい。夫の着物を縫いながら思いをこめた安倍女郎の歌。
場面イラスト(準備中)
題詞阿倍女郎の歌一首
現代語訳
私の夫がお召しになっている衣の、針目の一つ一つに残らず、入りこんでしまったらしい。私の心までも。
意訳
夫の衣を縫ったとき、一針ごとに思いをこめたので、その針目の一つ一つに自分の心までも入ってしまったようだと歌う。夫が着る衣に、妻の心が包みこまれているという、温かく深い愛情の歌である。
語釈・文法注
文法・本文
- 著せる
- 「著(け)す」は「着る」の尊敬語。
- 針目落ちず
- 針目の一つも残さず。
和歌
- 作者
- 阿倍女郎(生没年未詳)
奈良時代の女性歌人。巻第三の269番の作者でもある。 - 出典
- 『万葉集』巻第四・相聞・514番
- 歌体
- 短歌(五七五七七)
- 時期
- 第3期(710〜733年(平城京遷都〜山上憶良の没年ごろ))
- 状況
- 阿倍女郎の歌。
解説
衣を縫うという日常の営みに愛情をこめた歌として、古くから愛されている。
関連
出典
- 底本
- 佐佐木信綱編『新訓万葉集』上巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、151頁(コマ79)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 原文
- 佐佐木信綱編『白文万葉集』上巻 岩波書店、昭和24年(1949)、158頁(コマ85)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日