古典ライブラリー

万葉集 巻第四 515番

獨宿て 絕えにし紐を

中臣東人(なかとみのあずまひと)

ひとりで寝て切れてしまった衣の紐が不吉に思われて、どうしようもなく声をあげて泣いている。安倍女郎に贈った中臣東人の歌。

夜の寝床で、男が切れた衣の紐を手に、途方に暮れている

題詞中臣朝臣東人、阿倍女郎に贈れる歌一首

  1. 1獨ひとり獨ひとりひとり宿ね宿ねねててて獨宿而
  2. 2絕た絕たたえええにににししし紐ひも紐ひもひもををを絕西紐緒
  3. 3ゆゆしみゆゆしみゆゆしみととと忌見跡
  4. 4爲せ爲せせむむんすべすべすべ知し知ししらららににに世武爲便不知
  5. 5哭ね哭ねねのみのみのみしししぞぞぞ泣な泣ななくくく哭耳之曾泣

引用の仕方

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現代語訳

ひとりで寝ていて切れてしまった紐を、不吉に思って、どうしようもなく声をあげて泣くばかりだ。

意訳

恋人どうしが互いに結び合った衣の紐が、ひとり寝の間に切れてしまった。二人の仲が絶える前ぶれではないかと不安になり、どうしようもなく泣いていると訴える。

語釈・文法注

文法・本文

ゆゆしみと
「ゆゆし」は不吉だ、恐ろしい。

和歌

作者
中臣東人(生没年未詳)
奈良時代の官人。
出典
『万葉集』巻第四・相聞・515番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
第3期(710〜733年(平城京遷都〜山上憶良の没年ごろ))
状況
中臣東人が阿倍女郎に贈った歌。

解説

旅立ちや別れのときに、男女が互いの衣の紐を結び合い、再会まで解かない習俗があった。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』上巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、151頁(コマ79)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』上巻 岩波書店、昭和24年(1949)、158頁(コマ85)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日