古典ライブラリー

万葉集 巻第四 484番

一日こそ

難波天皇の妹(なにわのすめらみことのいろと)

一日くらいなら人も待つことができるけれど、長い日々をこうして待つばかりでは、とても生きていられない。大和にいる兄を慕う、仁徳天皇の妹の歌。巻第四の巻頭歌。

難波の宮の高殿から、女性が大和の山々の方をじっと見つめている

題詞相聞 難波天皇の妹、大和に在す皇兄に奉れる御歌一首

  1. 1一ひと一ひとひと日ひ日ひひこそこそこそ一日社
  2. 2人ひと人ひとひとももも待ま待ままちちち吉よ吉よよききき人母待吉
  3. 3長なが長ながながききき日け日けけををを長氣乎
  4. 4斯か斯かかくくくのみのみのみ待ま待ままたたたばばば如此所待者
  5. 5在あ在あありりりかつかつかつましじましじましじ有不得勝

引用の仕方

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現代語訳

一日くらいなら、人も待つことができるでしょう。長い日々をこうして待つばかりでは、とても生きていられそうにありません。

意訳

難波の宮にいる妹が、大和にいる兄を慕って詠んだ歌である。一日なら待てるが、何日も待つばかりではとても耐えられないと、逢えない日々の長さを訴えている。兄と妹とあるが、古代には恋人や夫を「兄(せ)」と呼ぶことがあり、恋の歌として読まれる。

語釈・文法注

文法・本文

長き日
「日(け)」は日数。長い日々。
在りかつましじ
「かつ」はできる、「ましじ」は打消推量。生きていられないだろう。

和歌

作者
難波天皇の妹(伝承の時代)
難波天皇(仁徳天皇とされる)の妹。名は伝わらない。
出典
『万葉集』巻第四・相聞・484番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
伝承の時代(舒明天皇より前)
状況
難波天皇(仁徳天皇とされる)の妹が、大和にいる兄の皇子に贈ったと伝える歌。巻第四は相聞(恋の歌)だけを集めた巻で、その最初の歌。

解説

巻第二の巻頭が仁徳天皇の皇后磐姫の歌であるのと同じく、巻第四も伝承の時代の歌から始まる。古い時代の作と伝えられるが、表現は新しく、後の時代に仮託されたものとみる説が多い。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』上巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、147頁(コマ77)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』上巻 岩波書店、昭和24年(1949)、153頁(コマ82)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日