古典ライブラリー

万葉集 巻第三 381番

家思ふと

児島(こじま)

家が恋しいからといって、あせって急いではいけません。風の様子をよく見て、気をつけておいでなさい。荒い道ですから。旅立つ人の身を案じた筑紫の遊行女婦、児島の歌。

海辺の道で、旅立つ男を見送る女性が、空の雲の流れを指さして何かを言い聞かせている

題詞筑紫の娘子、行旅に贈れる歌一首(娘子、字を兒島といへり)

  1. 1家いへ家いへいえ思おも思おもおもふふうととと思家登
  2. 2こころこころこころ進すす進すすすすむむむななな情進莫
  3. 3風かぜ風かぜかぜ守まも守まもまもりりり風候
  4. 4好よ好よよくくくしししててていますいますいます好爲而伊麻世
  5. 5荒あら荒あらあらししし其そ其そそののの路みち路みちみち荒其路

引用の仕方

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現代語訳

家が恋しいからといって、気がせいて急いではいけません。風の具合をよく見て、気をつけておいでなさい。荒い道ですから。

意訳

都へ帰る旅人に、筑紫の娘子児島が、家を恋しく思うあまりに急いではいけません、風の様子をよく見て、気をつけて行ってくださいと声をかける。荒れやすい海の道を行く人の身を気づかう、やさしい別れの歌である。

語釈・文法注

文法・本文

風守り
風の様子を見守ること。
好くしていませ
「います」は「行く」の尊敬語。よく気をつけておいでなさい。

和歌

作者
児島(生没年未詳)
筑紫の娘子。大宰府の遊行女婦(うかれめ)とみられ、巻第六に大伴旅人との別れの歌もある。
出典
『万葉集』巻第三・雑歌・381番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
第3期(710〜733年(平城京遷都〜山上憶良の没年ごろ))
状況
筑紫の娘子(児島)が、旅立つ人に贈った歌。

修辞

倒置
結句に「荒し其の路」と理由を置く。

解説

児島は、巻第六の965・966番で、都へ帰る大伴旅人に別れの歌を贈っており、この歌もそのとき旅人に贈ったものとみる説がある。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』上巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、111頁(コマ59)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』上巻 岩波書店、昭和24年(1949)、113頁(コマ62)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日