古典ライブラリー

万葉集 巻第三 352番

葦邊には

若湯座王(わかゆえのおおきみ)

葦の生える岸辺では鶴が鳴いて、河口を吹く風が寒く吹いていることだろう。津乎の崎は。遠い地の寒々とした景色を思いやった歌。

冬の葦原の岸辺で鶴が鳴き、河口から冷たい風が吹きわたっている

題詞若湯座王の歌一首

  1. 1葦あし葦あしあし邊べ邊べべにににははは葦邊波
  2. 2鶴たづ鶴たづたずががが音ね音ねね鳴な鳴ななきききててて鶴之哭鳴而
  3. 3湖みなと湖みなとみなと風かぜ風かぜかぜ湖風
  4. 4寒さむ寒さむさむくくく吹ふ吹ふふくくくらむらむらん寒吹良武
  5. 5津乎つを津乎つをつおののの埼さき埼さきさきはははももも津乎能埼羽毛

引用の仕方

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現代語訳

葦の生える岸辺では鶴が鳴いて、河口を吹く風が寒く吹いていることだろう。津乎の崎は。

意訳

作者はかつて訪れた津乎の崎を思い出し、今ごろは葦辺で鶴が鳴き、河口の風が寒々と吹いているだろうと思いやる。目の前にない景色を、鶴の声と風の冷たさで鮮やかに描いている。

語釈・文法注

文法・本文

湖風
「みなとかぜ」。河口や港に吹く風。
埼はも
「はも」は遠くのものをしのぶ詠嘆。

和歌

作者
若湯座王(生没年未詳)
伝未詳の皇族。
出典
『万葉集』巻第三・雑歌・352番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
第3期(710〜733年(平城京遷都〜山上憶良の没年ごろ))
状況
若湯座王の歌。津乎の崎は所在未詳で、近江国とする説がある。

解説

冬の水辺の寒々とした情景を、遠く思いやって歌う。作者についてはほかに伝わることがない。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』上巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、107頁(コマ57)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』上巻 岩波書店、昭和24年(1949)、108頁(コマ60)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日