古典ライブラリー

万葉集 巻第三 329〜330番

やすみしし 吾王の

大伴四綱(おおとものよつな)

わが大君が治めておいでになる国の中では、やはり都が恋しく思われる。藤の花が盛りになった。奈良の都を恋しくお思いですか、あなたは。小野老の歌を受けて、旅人に問いかけた歌。

大宰府の官舎の庭に藤の花房が垂れ、官人たちが杯を手に東の空を眺めている

題詞防人司佑大伴四綱の歌二首

  1. 1やすみししやすみししやすみしし安見知之329
  2. 2吾わ吾わわががが王おほきみ王おほきみおおきみののの吾王乃
  3. 3敷し敷ししきききませませませるるる敷座在
  4. 4國くに國くにくにののの中なか中なかなかにににははは國中者
  5. 5京師みやこ京師みやこみやこししし念おも念おもおもほほおゆゆゆ京師所念
  6. 6藤ふぢ藤ふぢふじ浪なみ浪なみなみののの藤浪之330
  7. 7花はな花はなはなははは盛さかり盛さかりさかりににに花者盛爾
  8. 8なりなりなりにににけりけりけり成來
  9. 9平城なら平城ならならののの京みやこ京みやこみやこををを平城京乎
  10. 10思おも思おもおもほすほすおすややや君きみ君きみきみ御念八君

引用の仕方

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現代語訳

〔329〕(やすみしし)わが大君が治めておいでになる国の中では、やはり都が恋しく思われることだ。

〔330〕藤の花は盛りになった。奈良の都を恋しくお思いになりますか、あなたは。

意訳

小野老が都の繁栄をたたえた歌を受けて、大伴四綱は、天皇の治める国は広いけれど、やはり都がいちばん恋しいと共感する。330番では、大宰府の庭に咲く藤の花を見ながら、上司の大伴旅人に、奈良の都が恋しいですかと問いかける。この問いに答えるように、次の331〜335番で旅人が望郷の思いを歌っている。

語釈・文法注

文法・本文

京師し念ほゆ
「し」は強め。都こそが思われる。
思ほすや君
「思ほす」は「思ふ」の尊敬語。「や」は疑問。

和歌

作者
大伴四綱(生没年未詳)
奈良時代の官人。大宰府の防人司の佑(次官)を務めた。
出典
『万葉集』巻第三・雑歌・329〜330番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
第3期(710〜733年(平城京遷都〜山上憶良の没年ごろ))
状況
大宰府の防人司の佑、大伴四綱の歌二首。328番に続く、大宰府の宴での歌とみられる。

解説

330番の「君」は、大宰帥の大伴旅人を指すとみられる。宴の席で、歌によって次の人に問いかけ、答えを促していく様子が、歌の並びからうかがえる。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』上巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、105頁(コマ56)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』上巻 岩波書店、昭和24年(1949)、105頁(コマ58)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日