古典ライブラリー

万葉集 巻第三 314番

さざれ波

波多少足(はたのおたり)

巨勢道にある能登瀬川の、音のさわやかなことよ。激しく流れる瀬ごとに。巨勢の道を旅して、川音の清らかさをたたえた歌。

山あいの道の脇を、浅い川が瀬音を立てて勢いよく流れている

題詞波多朝臣少足の歌一首

  1. 1さざれさざれさざれ波なみ波なみなみ小浪
  2. 2礒いそ礒いそいそ巨勢こせ巨勢こせこせ道ぢ道ぢじなるなるなる礒越道有
  3. 3能登湍のとせ能登湍のとせのとせ河がは河がはがわ能登湍河
  4. 4音おと音おとおとのののさやけささやけささやけさ音之清左
  5. 5たぎつたぎつたぎつ瀨せ瀨せせごとごとごとににに多藝通瀨每爾

引用の仕方

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現代語訳

(さざれ波)巨勢道にある能登瀬川の音のさわやかなことよ。激しく流れる瀬ごとに。

意訳

巨勢道は大和から紀伊へ向かう道で、その脇を能登瀬川が流れていた。作者は、瀬ごとに勢いよく音を立てる川の清らかな響きをたたえている。

語釈・文法注

文法・本文

さざれ波礒
「さざれ波」が寄せる「礒(いそ)」から、同音の「巨勢(こせ)」を導く序詞のような働きをしている。
音のさやけさ
「さ」は名詞を作る接尾語。音のさわやかなことよ。

和歌

作者
波多少足(生没年未詳)
伝未詳。
出典
『万葉集』巻第三・雑歌・314番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
第3期(710〜733年(平城京遷都〜山上憶良の没年ごろ))
状況
波多少足が、大和の巨勢(奈良県御所市古瀬のあたり)を通ったときに詠んだ歌。

修辞

倒置
「音のさやけさ」と詠嘆してから、「たぎつ瀬ごとに」と補う。

解説

原文の「礒越道」は「いそこせぢ」と読み、「礒」の「いそ」から「こせ」へと音を重ねている。川の音の清らかさを主題にした、すがすがしい歌である。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』上巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、102頁(コマ55)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』上巻 岩波書店、昭和24年(1949)、102頁(コマ57)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日