古典ライブラリー

万葉集 巻第三 313番

み吉野の 瀧の白浪

土理宣令(とりのせんりょう)

吉野の激流の白波よ、昔のことは知らないけれど、人が語り継いできたので、いにしえのことが思われる。吉野で昔をしのんだ歌。

吉野川の激流に白波が立ち、岸辺の老人が若者に昔語りをしている

題詞土理宣令の歌一首

  1. 1みみみ吉野よしぬ吉野よしぬよしぬののの見吉野之
  2. 2瀧たぎ瀧たぎたぎののの白しら白しらしら浪なみ浪なみなみ瀧乃白浪
  3. 3知し知ししらららねねねどもどもども雖不知
  4. 4語かた語かたかたりりりししし繼つ繼つつげげげばばば語之告者
  5. 5いにしへいにしへいにしえ念おも念おもおもほほおゆゆゆ古所念

引用の仕方

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現代語訳

吉野の激流の白波よ、昔のことは自分では知らないけれど、人が語り継いできたので、いにしえのことが思われる。

意訳

吉野は、天武天皇や持統天皇がたびたび訪れた聖地である。作者は昔の行幸のさまを直接には知らないが、語り継がれてきた話によって、激流の白波を前に、いにしえの栄えた時代に思いをはせる。

語釈・文法注

文法・本文

語りし繼げば
「し」は強め。語り継いでいるので。

和歌

作者
土理宣令(生没年未詳)
奈良時代初めの文人。懐風藻にも詩が残る。
出典
『万葉集』巻第三・雑歌・313番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
第3期(710〜733年(平城京遷都〜山上憶良の没年ごろ))
状況
土理宣令が、吉野で詠んだ歌。

解説

吉野の歴史を伝え聞いて昔をしのぶ歌で、天武・持統朝を理想の時代とみる奈良時代の人々の意識がうかがえる。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』上巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、102頁(コマ55)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』上巻 岩波書店、昭和24年(1949)、102頁(コマ57)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日