古典ライブラリー

万葉集 巻第三 306番

伊勢の海の

安貴王(あきのおおきみ)

伊勢の海の沖の白波が花であったらいいのに。包んで妻への家づとにしよう。行幸に従った安貴王が、妻への土産を思った歌。

伊勢の海に白い波頭が花のように立ち、浜辺の貴人がそれを手ですくおうとしている

題詞伊勢國に幸せる時、安貴王の作れる歌一首

  1. 1伊勢いせ伊勢いせいせののの海うみ海うみうみののの伊勢海之
  2. 2奧おき奧おきおきつつつ白しら白しらしら浪なみ浪なみなみ奧津白浪
  3. 3花はな花はなはなにににもがもがもが花爾欲得
  4. 4包つつ包つつつつみみみててて妹いも妹いもいもががが褁而妹之
  5. 5家いへ家いへいえづとづとずとにににせせせむむん家褁爲

引用の仕方

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現代語訳

伊勢の海の沖の白波が、花であったらいいのに。包んで、妻への家づとにしよう。

意訳

伊勢への行幸に従った安貴王は、沖に立つ白い波頭を見て、あれが花であれば包んで持ち帰り、妻への土産にできるのにと思う。美しい景色を見るにつけて、家で待つ妻を思う気持ちが自然に表れている。

語釈・文法注

文法・本文

花にもが
「もが」は願望。花であったらいいのに。
家づと
家への土産。

和歌

作者
安貴王(生没年未詳)
天智天皇の曾孫。巻第四に、因幡の八上采女との恋の歌がある。
出典
『万葉集』巻第三・雑歌・306番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
第3期(710〜733年(平城京遷都〜山上憶良の没年ごろ))
状況
天皇が伊勢国に行幸したときに、安貴王が詠んだ歌。養老2年(718)の元正天皇の行幸のときとみられる。

修辞

見立て
白波を花に見立てる。

解説

白波を花に見立てる表現は、のちの古今集時代に好まれるが、この歌はその早い例である。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』上巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、101頁(コマ54)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』上巻 岩波書店、昭和24年(1949)、101頁(コマ56)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日