古典ライブラリー

万葉集 巻第三 298番

亦打山

弁基(べんき)

真土山を夕方に越えて行って、廬前の角太河原で、ひとりで寝ることになるのだろうか。大和から紀伊へ向かう旅の夜の心細さを歌う。

夕暮れの峠を越えた旅の僧が、川原の石の上にひとり腰をおろし、暮れていく空を見上げている

題詞弁基の歌一首

  1. 1亦打まつち亦打まつちまつち山やま山やまやま亦打山
  2. 2夕ゆふ夕ゆふゆう越こ越ここえええ行ゆ行ゆゆきききててて暮越行而
  3. 3廬前いほざき廬前いほざきいおざきののの廬前乃
  4. 4角太すみだ角太すみだすみだががが原はら原はらはらににに角太河原爾
  5. 5ひとりひとりひとりかもかもかも宿ね宿ねねむむむ獨可毛將宿

引用の仕方

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現代語訳

真土山を夕方に越えて行って、廬前の角太河原で、ひとりで寝ることになるのだろうか。

意訳

真土山は大和と紀伊の国境の山で、ここを越えると異国の地になる。夕方に峠を越えたら、その先の川原でひとり野宿をすることになるのだろうかと、旅の夜の心細さを歌う。

語釈・文法注

文法・本文

亦打山
「まつちやま」。原文の「亦」は「また(まつ)」、「打」は「うつ(つ)」の音を借りた書き方。

和歌

作者
弁基(生没年未詳)
左注に、春日老(282・284・286番の作者)の僧であったときの名かとある。
出典
『万葉集』巻第三・雑歌・298番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
第2期(672〜710年(壬申の乱〜平城京遷都))
状況
弁基が、大和から紀伊へ向かう途中、真土山(奈良県五條市と和歌山県橋本市の境)を越えるときに詠んだ歌。

解説

真土山は紀伊への旅の歌に多く詠まれる。国境の山を越える不安と、ひとり寝のわびしさとが重なっている。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』上巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、100頁(コマ54)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』上巻 岩波書店、昭和24年(1949)、99頁(コマ55)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日