古典ライブラリー

万葉集 巻第三 291番

眞木の葉の

小田事(おだのつかう)

真木の葉がしなうように茂る勢の山を、遠慮もせずに私が越えていくと、木の葉はそれを知っていただろうか。勢の山を越える旅の歌。

常緑樹の枝が重くしなう山道を、旅の男が枝をかき分けながら進んでいく

題詞小田事の勢の山の歌一首

  1. 1眞ま眞まま木き木ききののの葉は葉ははののの眞木葉乃
  2. 2撓しな撓しなしなふふう勢せ勢せせののの山やま山やまやま之奈布勢能山
  3. 3忍しぬ忍しぬしぬばばばずずずててて之奴波受而
  4. 4吾わ吾わわががが越こ越ここえええゆけゆけゆけばばば吾超去者
  5. 5木こ木ここののの葉は葉はは知し知ししりりりけむけむけん木葉知家武

引用の仕方

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現代語訳

真木の葉がしなっている勢の山を、遠慮もせずに私が越えていくと、木の葉はそれを知っていただろうか。

意訳

勢の山は、紀伊へ向かう旅人が越える山であった。作者は、真木の葉が重くしなう山道を、遠慮もなく越えていく自分を、山の木々は見ていたのだろうかと歌う。山を神聖なものとして敬う気持ちと、ひとり越えていく旅の心細さとが重なっている。

語釈・文法注

文法・本文

忍ばずて
「しのぶ」はこらえる、遠慮する。遠慮もせずに。

和歌

作者
小田事(生没年未詳)
伝未詳。
出典
『万葉集』巻第三・雑歌・291番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
第3期(710〜733年(平城京遷都〜山上憶良の没年ごろ))
状況
小田事が、紀伊国の勢の山を詠んだ歌。

修辞

同音の反復
「しなふ」「しぬばず」と、「し」の音を重ねる。

解説

歌の意味には諸説があり、とりにくい歌の一つである。「知りけむ」を、木の葉が自分を知ってくれただろうかと、山との交感を願う意味に読む説もある。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』上巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、99頁(コマ53)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』上巻 岩波書店、昭和24年(1949)、98頁(コマ55)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日