万葉集 巻第三 288番
吾が命し
私の命が無事であったなら、また見よう。志賀の大津に寄せる白波を。行幸に従った穂積老の歌で、のちに流罪となった作者の運命を思わせる。
場面イラスト(準備中)
題詞穗積朝臣老の歌一首
現代語訳
私の命が無事であったなら、また見よう。志賀の大津に寄せる白波を。
意訳
近江への行幸に従った穂積老は、志賀の大津に寄せる白波を見て、命があればまたこの景色を見に来ようと歌う。旅先の景色を再び見ることを願う、よくある旅の歌の形であるが、作者が後に佐渡へ流されたことを思うと、「命しまさきくあらば」という言葉が重く響く。
語釈・文法注
文法・本文
- 眞幸くあらば
- 「まさきく」は無事で、つつがなく。
和歌
- 作者
- 穂積老(?–749)
奈良時代の官人。養老6年(722)、天皇を非難した罪で佐渡に流され、のちに許されて都に戻った。 - 出典
- 『万葉集』巻第三・雑歌・288番
- 歌体
- 短歌(五七五七七)
- 時期
- 第2期(672〜710年(壬申の乱〜平城京遷都))
- 状況
- 天皇の近江の志賀への行幸に従った穂積老が詠んだ歌。左注は行幸の年月はわからないとする。
修辞
- 倒置
- 「またも見む」の後に、見たいものを置く。
解説
穂積老は後に佐渡に流され、十数年後に許されて都に戻った。巻第十三にも、流される旅の途中の作とされる歌が残る。
関連
出典
- 底本
- 佐佐木信綱編『新訓万葉集』上巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、98頁(コマ53)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 原文
- 佐佐木信綱編『白文万葉集』上巻 岩波書店、昭和24年(1949)、98頁(コマ55)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日